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「文庫X / 殺人犯はそこにいる」にジャーナリズムの真髄を見た

普段、僕はあんまりノンフィクションって読まないんです(小説も読まないんだけど)。

前回の記事でも登場した工藤さんにこの「殺人犯はそこにいる」をオススメされて、鳥貴族でビール片手にAmazonで注文してました。10杯ぐらい飲んでたので、注文したのあんまり覚えてないんですけど。

で、届いたのがこちら。あ、これ、文庫Xじゃん!

いろいろと話題になって、すでに中の本は「著:清水潔『殺人犯はそこにいる -隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件- 』(新潮文庫)」だと知られているのでカバーにもピンクで書名が入っていますが、当時は中身は知らされず販売されていた書籍です。

岩手のさわや書店フェザン店での書店員さんが、この本を売るために「文庫X」として興味を煽り、話題を作り出し、数千冊と販売された本です。そんな有名な本を今更ながらに読んでみました。

 2016年7月22日、盛岡の「さわや書店フェザン店」の一角に、奇妙な本が並びました。その名は「文庫X」。「どうしてもこの本を読んで欲しい」という書店員の熱い思…
www.shinchosha.co.jp

カバーを外すと、本当の表紙がでてきます。僕はAmazonで買いましたが、いまはどこで買っても書店員さんのカバーが被せてあるんでしょうね。。

事実は小説よりも奇なり

読み終わった後の感想は、一言「すごいわ…」しか出てきませんでした。3日間で読んだのですが、おかげさまで寝不足です。

殺人犯はそこにいる」は実際に手に取って読んでもらいたいのでネタバレは避けますが、1979年から96年にかけて北関東で発生していた5つの事件を追ったルポルタージュです。

そのうち1件は冤罪事件として大きな話題となった「足利事件」について、徹底した取材によって犯人とされていた菅家利和さんの無実を証明しています。さらに真犯人の目星も付いているにも関わらず、司法が動かない現実に対して警鐘を鳴らしています。そしてマスコミの行動・言動についても言及しています。

物凄い取材に裏付けられた事実が500ページに渡って載せられており、まさに記者魂がこもった一冊です。
 

余談ですが以前に、群集心理はどのように形成されるのかということを書いた「世論」という書籍を紹介しましたが、マスコミは世論形成に強い影響力を持っています。情報の発信元や加工の仕方によって、無実の人が犯人にされてしまうのです

メディア運営者や関係者は熟読して腑に落としておくべき書-「世論(上) -ウォルター・リップマン著」
われわれはたいていの場合、見てから定義しないで、定義してから見る。 (111ページ)
someyamasatoshi.jp

情報発信者は必読の書

出版自体は数年前なので何を今更感があるのですが、まだ読んでいない人が居たら今すぐ買って読んでください。特に情報発信者は必読です。

何がすごいって、

・圧倒的な取材力
・現場の臨場感をそのまま伝える卓越した筆力
・情報を発信するタイミングと覚悟
・時折挟むユーモアによる緊張の弛緩

このあたり、本物のジャーナリストはここまでやるのかというのを見せつけられ、自分の未熟さに絶望感すら抱きます。

 
僕は松潤が主演の「99.9」というドラマが好きなんですが、演技ではない本物の99.9がこの本にはありました。一つ一つの証言や証拠の確認、現地調査、信頼関係の構築、仮説と検証、そして交渉、とにかくリアルがここにあります。

絶対に読んで損はないと思いますので、全力でオススメします。


殺人犯はそこにいる