明日やりますというブログを運営している奥野さんが主催する「ブロガーズリスク分散勉強会」というイベントで著作権のことについて学んできましたので、その参加レポートを載せておきます。
今回は第三回目で、サブテーマとして「~マンガやキャプチャー画像の適切な引用を学ぶ~」という内容になっています。ちなみに第一回は僕もスピーカーでした、はい。
今回のイベントのポイントは、法律のプロの弁護士さんが、実際の判例を交えて解説してくれるというもの。なかなか聞ける内容ではないので、ぜひ皆さんも記事を読んでいただけると幸いです。
↑2018年8月に発売予定です。こちらでもデジタルコンテンツの権利関連について詳しく解説していますので、楽しみにしてくださいね。
講師の紹介
今回の講師はGVA法律事務所 橘大地様。取扱分野はゲーム・アプリ・ベンチャー・IPO・ファイナンスがメインになります。経歴はサイバーエージェント(社内弁護士)を経て、ご自身で弁護士事務所を運営されています。
ベンチャー弁護士の挑戦ブログ
http://ameblo.jp/shibuben/
ぶっちゃけ、この記事自体、引用の範囲をはるかに超えているので、橘先生に怒られたら修正します。きっと大丈夫ですよね・・・(恐る恐る)。
【追記】許可いただきました。ありがとうございます!
@masatoshisomeya ありがとうございます!セミナーに関する権利は、昨日の参加者に限り著作権許諾いたしますので法的に問題ありません。w
— 橘大地(daichi tachibana (@venture_lawyer1) 2015, 1月 26
最低限押さえておきたい、著作権の権利
著作権違反による発生する責任
刑事責任
著作権法119条、124条に罰金などの刑事責任が記載されています。(※スライド5ページ目参照)
著作権違反の罪は親告罪(123条)で、権利を侵害された人からの訴えがないと公訴提起はできません。
民事責任
著作権法112条
差止請求・削除請求
著作権法114条1項
損害額の推定
・複製物の数量
・利益の額
・ライセンス料相当額
を算出(推定)し、著作権侵害による利益はすべて回収する金額を請求するのが一般的だそうです。
著作権とは
1.著作権(財産権)
著作物に対する経済的利益を対象にした権利。
・複製権
・公衆送信権、送信可能化権
・譲渡権
・翻訳、翻案権
→著作物を自由に使用・処分できる権利。
2.著作者人格権
著作者が自己の著作物について有している人格的利益を対象にした権利。
・公表権
・氏名表示権
・同一性保持権
→著作物を公表する手段、方法などを決定できる権利。
著作物とは
著作権法2条1項1号に「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」」と定義されており、ポイントとなる要素は
1.思想又は感情の表現
2.創作的
の2つが重要な要素となります。
著作権の特徴
・無方式主義
→制作すると自動的に発生
・保護されるのは「表現」のみ
→アイディアは保護されない
・保護期間
→日本では著作者の死後50年を経過すると著作権が消失する(TPPが成立すると日本でも70年になる可能性あり)。
→ただし海外の場合は死後70年(※ミッキーマウス保護法とも言われている・・・ちなみにいまは死後68年)。
ブログ書くときに知っておくべき著作権に関する10のこと
歌詞の引用の仕方
■考え方
そもそも著作物であるかを考える。今回は歌詞のため、一般的に創作性があるので基本的には転載禁止。
■創作性の考え方
「何らかの個性が表現されたもの」
交通標語でも創作性が認められた場合もある。
■歌詞の場合
OK・・・歌詞のほんの1フレーズのみを転載
NG・・・歌詞全部、1フレーズ2~3小節、Twitterでつぶやく140文字
■使用についての原則
JASRACに許諾を取りお金を払う。許諾は簡単に取れる場合が多いが、コストがかかる。
■例外
1.引用の範囲内である
引用する「必然性」がある
自分の文章と引用部分の「区別」がされている
自分の文章と引用部分との「主従関係」が明確である(自分の文章が主、引用が従)
引用物の「出所の明示」がされている
2.JASRACとの包括契約がされている
ブログ
アメーバブログ、ライブドアブログ、Seesaaブログ、Yahoo!ブログなど。メディア運営者がJASRACと包括的な契約締結をすることで、ブログ内で好きなだけ利用可能。
動画
ニコニコ動画、YouTube。プロモーションビデオは肖像権等の侵害になるので公開してはNGだが、歌ってみたシリーズは著作権的にOK。
他人の投稿、コメントの引用
■出発点はその投稿に著作物といえるか
例
おはよー
こんにちは、面白かったです
くそすぎるwww
個性が発生していないので引用OK。
■自分のブログ内のコメントをブログ内で転載
利用規約等で投稿したコメントはいつでも転載可能な旨、事前に許諾を得ておけばOK
■Twitterの投稿を転載
転載は禁止だが、埋め込み機能の利用であればOK。
あれ?資料作ってたはずなのにいつの間にかブログ書いてる僕がいるよ
— そめたん(非公式) (@masatoshisomeya) 2015, 1月 23
↑OK。
■YouTube
埋め込み自体は著作権違反ではない。が、TVの無断転載や有名人のPV集を埋め込む場合には、そもそも著作権違反なので注意が必要。
■バイラルメディア
上記に準じていれば合法であるが、そうでない場合も多い。
マンガの引用について
■判例
・事案の内容
1997年 小林よしのり氏著作の「ゴーマニズム宣言」を批評した書籍で、ゴーマニズム宣言のコマをそのまま掲載。一部ではコマを切り取って掲載。
複製権侵害、同一性保持権侵害の2つの要素から問題になった。
■判決
2002年最高裁にて判決:出版差し止め確定
■大前提:マンガのコマは著作物
なので引用といえるかがポイント。
「主従関係」→引用の方が多いのはNG。
基本的にジャンプ速報系などのブログは全部アウト。考察ブログで一コマ引用→20~30行の解説なら認められるであろう。
「必然性」→コマの切り貼りは引用の必然性なし。解釈・批評を行うために引用を使う必要があるのはOK。
■転載・引用・翻案を許しているマンガもある
「ブラックジャックによろしく」など
ほかのサイトのリンクは張っていいのか?
■リンクの方法
ハイパーリンク
→URLは著作物でないのでOK
ディープリンク
→トップページではなく下層ページヘのリンク→URL自体は著作物ではないのでOK。
フレームリンク
→自分のページのフレーム内に他人のページが表示される→△。
芸能人やスポーツ選手は掲載していいのか
■パブリシティ権
氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利。
中田英寿選手の生い立ちを著述した書籍の表紙に画像を使用。
結論:パブリシティ権の侵害は認められず(詳細はスライド43ページを参照)。
「ピンク・レディ de ダイエット」にピンクレディーの画像を使用。
結論:パブリシティ権の侵害は認められず(詳細はスライド46ページを参照)。
具体的には「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に」違法なパブリシティ権侵害となるとの判断基準を判示。PVアップのための有名人の写真掲載は広告目的と認定される可能性が高いので危険です。
新商品情報などをブログに掲載していいの?
物にはパブリシティ権は発生しないのでOK。ギャロップレーサー事件の判例でパブリシティ権侵害は否定。
■問題は著作権侵害
ネットオークションなどに商品画像をそのまま利用して出品。
結論:違法
プレスリリースもそのまま転載はNG。引用の範囲内かどうかが重要。
書籍の内容は書いていいのか?
■基本的に今までの考え方の応用
引用はもちろんOK。要約は翻案権という権利の問題になる。原著作物を読まなくても、原著作物に表現された思想、感情の主要な部分を認識させる内容を有しているものは違法。
ごく簡単に紹介する場合→違法と判断されづらい
ゲームや映画のレビューは書いていいのか
■ゲーム攻略ブログ・サイトなどは実際怪しい
ゲーム画面のキャプチャ、攻略内容などを使ってレビューは完全に引用の範囲を超えている。キャラクター画像、パラメーターなど、画像を使う必要性がない事例も多い。
■映画のレビューは問題ない場合が多い
ネタバレを書いたからといっても直ちに著作権の侵害にはならない。引用・要約の範囲内かどうか。
他人のブログの記事とどこまで似せていいのか
■類似性
他人の著作物の(本質的に)内容にどこまで似ているのか。
結論:類似性否定
本の擬人化はありふれた表現。個性を発揮しているわけではない。
結論:類似性否定
頭身、目の大きさなどはありふれた表現。洋服まで似ていたら侵害だがそうでもない。
■テキストの類似性は一律の基準が難しい
類似している箇所を抽出し、その箇所が創作性を有しているかの視点でジャッジする。
■パロディであっても著作権法上はダメ
バターはどこへ消えた・・・内容は殆ど同じ。バターだから違うでしょということはない。
サムネイル(アイコン)などで芸能人やキャラクターを使用していいのか
■通常通り、複製権・公衆送信権違反になる
特にSNSで使用を許可しているわけではなく、著作権違反。非営利で使用していると主張しても公に利用しているので、私的複製にはならない。
質疑応答
質問)電子書籍ではスクリーンショットが可能。悪意を持ってキャプチャしてはだめだが、好意的に紹介したい場合はどうか?
引用の範囲内に準拠していれば適法。
質問)電子書籍の注意書きで引用するなと書いてあっても使っていいのか?
海外は主張しないと著作権を認めてくれないので書いている場合が多い。引用するなと言っていても、法律上、引用は認められているので準拠していればOK。
質問)テレビの画面を写真で撮って使っていいのか?
やはり引用の範囲内かどうか。
質問)著作権フリーのマンガの探し方
「著作権フリー マンガ」。50年前に死んだ漫画家特集などで探すと出てくるはず。
質問)スマホのフルセグキャプチャとかのレビューをしたい場合
風景などであれば著作物と言えない部分もあるので、それであれば大丈夫なことが多い。タレントの顔が写っているものは避けるべき。
質疑応答兼パネルディスカッション
奥野さんの質問&一般質問が繰り広げられました。
1)な、なんだってーっ?のコマはOK?
驚きの表現のために某MMRのコマを使いたいが「必然性」ってあるの?
→完全OUT。このマンガのこのコマのこのシーンを使う必然性がない。LINEスタンプ的な使い方はNG。
クオリティの高すぎるアスキーアートはNG。粗雑なら類似性が無いのでOK。粗雑であればあるほど大丈夫。
短いテキストはOK(「諦めたらそこで試合終了だよ」的な)。事象、事実明示であれば長くても誰が書いても一緒なのでOK。
有名人の顔写真の似顔絵化は、ディフォルメ化して類似性が無くなれば大丈夫の場合が多い。そちらが新たな著作物となる。
2)やめたほうが良い相手
ジ◯ニーズ最強、二番手ミ◯キー。
3)どこまで加工すればOKなのか?
元の写真が想定できるレベルだとNG。テレビ局での似顔絵は芸能界の暗黙の了解的なもので、パブリシティ権とはまったく別。
4)引用表記の仕方
マンガ・・・著作者(著作権が出版社・団体になる場合もある。漫画の場合は慣行上作者が多い)、タイトル、巻数・ページ数は法的には載せなくても問題ない。載せた方が親切ではあるが。
アニメ・・・著作者(著作権が制作会社・団体になる場合もある。アニメーターの法人、放映権社の場合もある。◯◯制作委員会など)、タイトル
歌・・・作詞家・作曲家、タイトル、配給会社
Web情報・・・著作者名、URL、ブログタイトル
表記の仕方のルールは明確には無い。確認できるところに書かれていれば問題ない。
参考元、脚注で引用元を記事の下にまとめるのもOK。
5)JASRACと包括しているブログサービス一覧
アメーバ
Seesaa
textream
Yahoo!知恵袋
Yahoo!ブログ
ライブドアブログ
歌詞をどんどん書きたい(引用したい)のであれば、これらのブログサービスを利用するのもあり。
イベントの感想
専門家から直接、著作権についてお話を伺えたのは本当に貴重な機会でした。評判が良い、要望が多いようであれば第二回の著作権勉強会も開かれると思いますので、興味のある人はぜひ奥野さんまで開催の要望を送ってみましょう。