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考えるとは、学びとは何かを改めて理解できる!東大1年生基礎演習のテキスト「知の技法」

2013/04/15

はい、どうも。みなさんこんにちは。「知の技法」という本を読み終わりましてね。今日はそのことについて書いてみようかと。

知の技法

この本は東京大学教養学部で、1993年から文化系(文I、文II、文III)の1年生第一学期を対象として設けられている必修科目「基礎演習」で使用されていたサブテキストで、「学び」に共通する技術・作法としての「知の技法」を実践的に学ぶための本です。基本的にはこれから大学に入学する人たちに向けて大学での学習方法についての考え方を指南する本ですが、僕のように大学卒業後十数年経った人間でも新しい発見があります。

なお、たかだか280ページ程度の書籍ですが、僕の場合(一日1~2時間程度しか読んでませんが)読了まで1週間程度かかりました。一般的なビジネス書の場合、数時間もあれば読み終わってしまうのですが、「知の技法」は小論文が複数掲載されているような形式になっているので、僕のように学術論文に慣れていない人はちょっと読み進めるのに時間がかかるかもしれません。

前置きが長くなりましたが本編の内容へ

本書は全部で三部構成になっており、第一部は学ぶという行為全般についての考察、第二部が一番ボリュームが多くて(この書籍のメインコンテンツ)学びを認識するための技術、第三部が表現(論文の作法や口頭発表)の技術という流れになっています。

第一部が学問の行為論、第二部が認識の技術で「フィールドワーク」「史料」「アンケート」「翻訳」「解釈」「検索」「構造」「レトリック」「統計」「モデル」「コンピューティング」「比較」「アクチュアリティ」「関係」、第三部が表現の技術で、「表現するに足る議論とは何か」「論文を書くとはどのようなことか」「論文の作法」「口頭発表の作法と技法」「テクノロジーの利用」「調査の方法」という構成で、計18名もの(おそらく)大学教授・講師の面々が論じています。

なお、これらの項目(特に第二部)は一つ一つ独立した内容になっていますので、興味がある項目だけ読みすすめても大丈夫です。

物書きが読んでおいた方が良いと思われる項目

僕としては第二部の「フィールドワーク」「解釈」「統計」「アクチュアリティ」、そして第三部の「論文を書くとはどのようなことか」「論文の作法」をお薦めします。これらの項目を読むことで一つの物事の多面性を認識し、持論を紡ぎ上げていく為に必要な要素を学ぶことができます。また、その持論をいかに文章として表現していけば良いのか、読み手になるべく誤解を与えず自分の意見を理解してもらうためにはどうしたら良いのかというヒントを得ることができるでしょう。

おそらく一回読んだだけでは「??」となる人も多いと思いますが、複数回読んだり、実際に自分の経験に置き換えて考えてみると腑に落ちる部分もあるかと思いますので、いろいろと工夫しながら読んでみてください。

表現者が読んでおいた方が良いと思われる項目

表現者と書くと堅苦しいですが、要は人前で話す機会が多い人という認識で捉えていただければOKだと思います。要はプレゼンターということですね。

最近、ありがたいことに僕はセミナー講師の真似事をさせて貰う機会が多いのですが、この本を読んで改めて準備の重要性を認識しました。項目としては「口頭発表の作法と技法」が該当しますが、正直、当たり前のことが書かれています。ただ、当たり前のことだと頭では理解していても、実際に行動に移せるかというとそうではないのです。特にリハーサルの重要性について書かれていましたけど、これって分かってはいてもなかなか自分に言い訳してできないんですよね。

なお、「テクノロジーの利用」についてはさすがに20年も前の本なのでOHPとか懐かしい単語が出てきます。ここは参考程度にどうぞ。

要はどうなのよ

個人的に感じたこの本のテーマは、「現象としては一つのことでも、物の見方によって幾通りもの結論に至る」ということを延々と述べているという印象です。物事には多面性がある、そして自分はどのような解釈をしたのかを認識することが重要で、日常生活では無意識的に行なっていることでも、論述したり人前で発表する機会が多い人は「判断している」ということをしっかりと理解しておく必要があると感じました。

「知の技法」という書名が表現している通り、この書籍はビジネス書や自己啓発書系の書籍とは一線を画していて、文章もちょっと堅めに書かれている印象があります。Amazonのカテゴリでも「社会学 > 論文・講演集」となっているだけあって、内容的にも学術書というか教科書の雰囲気です。初版は1994年と20年近く前の本ですが今でも十分通じる内容になっており(注:現在は続編に当たる「知の論理」「知のモラル」「新・知の技法」などが刊行されている)、そもそも学問とは何か、知とは何かということに言及したい人はぜひ読んでいただきたいです。書評をする人も読んでみるといいかもしれないですね。

とはいっても一度や二度、本文を読んだ程度ではなかなか自分の行動に反映することは難しいと思いますので、本を読み終わったあと実際に一度やってみて実感を得てから、再度本書を読んで訓練を続けていくことが自分の能力(脳力)を上げていく一番の近道だと感じました。

知の技法: 東京大学教養学部「基礎演習」テキスト

小林 康夫 東京大学出版会 1994-04-08
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by ヨメレバ