出版業界に未来はない?神田昌典氏が講師のセミナーで、これからの出版業界で活躍できる人の条件を聞いてきたよ

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実はこう見えて僕、本とか書いていまして。

で、麦焼酎を嗜みながらFacebookのタイムラインをぼんやり眺めていたら、著者と編集者を対象としたイベントの情報が流れてきましてですね。そのイベントは第一部で「これからの出版業界、活躍できる人の条件」というテーマで神田昌典氏が講演し、そのあとの第二部が懇親会という流れでした。神田昌典氏といえば口コミ伝染病とか、成功者の告白とか、とにかく著者としてベストセラー&ロングセラーを連発している著者&マーケッターですね。僕も若いころよく読んでたなぁ。

その神田さんの講演が聞けて、なおかつ100人以上の著者や編集者が集まるということで、小躍りしながら参加してきました。神田さんの講演を聞くのは初めてだったのですが、非常に勉強になったので要点をシェアしていきたいと思います(主催者側にも許可取ってます)。

神田さんのパートは90分の講演だったのですが、一貫して言っていたのが「出版業界に未来はない」ということでした。「全体的に沈んでいく業界で、今日は元気になる話は一個もありません(笑)」とも言い切っていました。ただ、後半部まで読んでいただけると分かるのですが、半分は本音、残りの半分は神田さん流のエールというか、意欲の高い出版関係者とともに業界の流れを変えていきたいという気持ちを感じました。

あ、毎回、講演内容のシェアの記事には注意点として載せているのですが、あくまでも僕がそう解釈したということなので、その辺を踏まえて読んでください。

出版業界に未来はない

出版業界自体は1997年には成長期が終わった。今年ぐらいから出版取次会社の合併や倒産が目立つようになっている。業界全体が本格的に変わりつつあり、2019年には出版業界は無くなるかもしれない。書店はどんどん減っている。綺麗な右肩下がり。それを見れば普通に出版界に希望を寄せるのはおかしな話でしょう。唯一の希望は著者になりたい人はたくさんいるということ。

現在の日本は高齢化社会になっている。本を読みたい人はこれからの未来のある人で、書きたい人は自分の経験を社会貢献として書きたい人。読みたい人は減って、書きたい人は増える。昔は本を出版する人が少なかった。ビジネス書はハードカバーの堅い本が主流だったが、そんな中で僕はショッキングピンクで軽めの本を出せたから、出版社と一緒に伸びることができた。

図書館の貸出件数は増えている、ブックオフでの取引額は増えているとはいえ、業界としては縮小している。唯一伸びているのは出版エージェント。まだブルーオーシャンで、マーケットとしても活気がある。でも、出版しても売れるかどうかは別問題。売るための戦略が要る。

本を出せばビジネスに繋がるというロジックは2008年まで

2008年までは出版の参入時期として適切だった。それ以降は参入が増えて大変。2019年に向けて大変革があるであろう。今までのモデルは通用しない。本を出せば次のビジネスに繋がるというロジックは2008年までで、今は違う。昔は初版10,000部ぐらい売れたが、今は違う。名刺代わりの本が売れる時代ではない。いい本でも、プロ中のプロが書いても売れない時代。現状を踏まえて次の一手を打つ必要がある。

正直、収益面だけを見たらランディングページ作ってFacebook広告で集客するビジネスモデルの方が、本を書いている時間を考えたら全然儲かる。

Amazonの未来戦略

Amazonから突然「電子書籍出しませんか?」という連絡が来た。まだKindle化されてない書籍を、こちらが電子書籍化するのでKindleで売りましょうと。普通、こんなこと出版社がやることでしょう。それがAmazonから著者に直接連絡が来る時代。出版社何やってんの?最大70%のロイヤリティ払うとも言っていた。

彼らの目論見は何か。古い書籍のKindle化が目的ではない。Amazonの目的はそのあと。ブログや書き下ろし原稿も直接Amazonで書きませんか?というのが最終目的だろう。取次も出版社も通さず、流通の私達とやりましょう。書店では買えない本がAmazonで変える。昔、セブンイレブンでしか買えないムック本をやったこともあるが、それと同じようなパターンでしょう。

Amazonから連絡が来て、ブログや書き溜めている文章を直接出版することができる時代になったんです。

とはいえAmazonが直接やる時代になったからといってやりますか?僕はやりません。3割もロイヤリティ取られる。2年前に久しぶりにボツになった原稿があった。ボツになった理由は充分に噛み砕かれてない内容だから難しいとのこと。「だったらいい!自分で出すもん!!」と強がって自費出版した。3千冊刷って価格15,000円。装丁もこだわって、毛羽立ったフェルトを使って金箔もつけた。書籍を申し込んだら、まず鍵が送られてくる。その鍵は本が届くまで取っておいてもらって、本は錠付きの箱に入って送られてくる。その鍵で開けて、中には本とDVDが入っているという仕掛けをおこなった。制作費2割。2週間で4500万円売り上げて、3600万ぐらい儲けて絶版にしたことがある。

どういうことかというと、著者と読者は近づいている。この傾向は変えられない。Amazonの勢いは止まらない。僕がAmazonだったら書店を買収する。が、Amazonは流通を押さえにいった(近くのコンビニで受け取れる)。取次は更に厳しい。

ドローンの活用。ボタンを押したらドローンが飛んでくる時代になる。流通革新しているなかで取次が何をしなければいけないのか。しかも著者の方が読者よりも多いという時代。明らかでしょ?

今の世の中、SNS、ブログ、Youtubeなどなど、活字の量、言葉の量、情報の量は爆発的に増えている。情報に対するニーズは高まっている。その中で書籍が生き残るためには紙である必要性を伝えられるか。YouTubeや電子書籍とは違う。スムーズに人に伝えられる紙という意図が重要。特に紙はレイアウトやデザインにこだわるべきで、電源を入れなくてすぐに情報を得られる形式を突き詰めるのが良いのではないか。

骨太な本が売れない日本

現在の日本では残念ながら非常に濃い、深い内容の本は売れづらい。理論書、学術書は売れづらい環境。1950年代のベストセラーは哲学書などの読み応えのある。骨太の本だったが今は違う。ふくらはぎを揉んで健康になる、これでこれだけ痩せられるという本ばかり。健康関連。高齢化社会だから当然だ。

昔の経営者の話す内容は金か女。今はスピリチュアルか健康。どんどん売れる本のジャンルは変わる。

アメリカの書籍は素晴らしい。移民が多いからか、若い人口が流入しているせいか、新しい知識がどんどん蓄積されている。アメリカのAmazonレビューではその学術書に関しての議論がおこなわれている。あの論文と矛盾するとか、最新の研究結果のなどがレビュー内で紹介されている

日本のAmazonレビューの質の低さ、薄さが悲しくなる。できるだけ考えない本が売れ続ける。骨太の本が売れづらい。アメリカは読み応えのある本の売れ行きがどんどん伸びている。逆にそこにフォーカスした出版社が出たら面白い。

不況なのは出版業界だけなのか?

実は出版業界が不況なんじゃなくて、日本自体が右肩下がり。人口減、高齢化、ほぼ全部の業界が右肩下がり。美容室は飽和状態、住宅は増税で苦しい。出版業界なんてまだ良い方。

重要なのはどれだけ「人」を集められるか、求心力のある場を作れるか。求心力のある著者は売れ続ける。同様に求心力のある出版社の本も売れ続ける。人に対してアピールできない組織や個人は衰退していく。チームワークが良い組織は元気で新しい発想も生まれる。諦めている組織は未来がない。場の求心力になりうる中心人物・リーダーがいるかどうか、そういう組織になっているかというのが重要。

とてもとても重要なのは、あなたの組織が人を巻き込めるだけの魅力的な活動をしているかどうか。次の時代がどうなるかわからない。技術的に大きな変化が起きるかもしれない。永続性のあるキャリアになるかわからない。紙だけじゃなくてメディアとして、映像をどうやって作るか、どうやってSNSで拡散するか、それをどうビジネスにつなげて、永続的に進められるかが大切。

ビジョン、求心力のある場、読者を巻き込めていますか?著者を巻き込めていますか?自分自身の使命感だけでは変革は起きません。使命感に基づいて、人を巻き込めるだけの力がないと発展しない。使命感は世間的に評価される必要があるが、バッシングされることも多い。その場へ人を巻き込めるか。

本も一緒。意見が強すぎる(使命感だけが強い)本は爆発的なヒットはしない。編集者を巻き込む、書店を巻き込む、他部門を巻き込む、著者やメディアを巻き込んで、熱量が満ちた場ができた時にヒットが生まれる。ファンも生まれる。こういった当たり前の力強さが重要。

ムーブメントは本が作り出す事が多い。本が出て、人に読まれて、ラジオやテレビに波及する。本は情報の塊。それを1,500円で世間に送り出すということは、造幣局とやっていることは一緒。出版社はお金を刷っているんです。本来は世の中が次にどこに向かうのかを感じ取って、それをいち早く地上に種として植えていくかを予測することが重要。だから戦後は哲学書が売れた。今は売れる本が出版社にとって重宝される時代なので、そこまでのビジョンを持っている編集者はいない。

全ての変革は本から始まっている。だから僕は出版社や書店を応援している。紙の本はなくならない。紙と神は同じ言霊。ただ紙というプラットフォームに社会変革できるような思想を込められるかどうかである。

Read For Action

高い本をみんなで読む。安い、薄いのは一人で読めばいい。骨太の本を読んで、そこから地域にどう行動できるかを考える読書会。

日本人の未来の変革に対するエネルギーは高まっている。危機意識に敏感な層に届けられるメディアは少ない。その一つの解がこの読書会。

ネット上の情報だけでは行動に移らない。ネット上で行動している人を見ると3倍人は動く。フェイス to フェイスになったら6~8倍の人が動き出す。コミュニティのパワーが大きくなっている。コミュニティを作り出しているのが本なんです。出版界は不況かもしれないが存在意義は大きい。こんなやりがいのある業界は出版業界以外無い。好きなことやって、社会的なやりがい、神様から期待されているミッションを形にできる。有権者に批判されることもなく、自分たちのやりたいことを宝箱に入れて世界に出すことができる。だからしっかりやって欲しい。

1947年西田幾多郎全集発売時には、岩波書店に3日間も徹夜行列が発生した。時代変革の時は「書」が重要。明治維新の直前は様々な私塾で洋書を読んで読書会をやっていた。

すベてを失った時に人びとが求めるもの。衣食住に加え、そこには「書」があった。活字がなければ人はダメになる。それだけ文字は重要。「読むための読書」→「行動のための読書」へ。

読書会がじわじわ広がるとロングセラーにつながる。いまの時代、著者の寿命は三冊保たない。消耗品になっている。場の中で自分たち自身の本が読書会で読まれていくと、いろいろな本が読まれて、著者寿命も伸びる可能性がある。

蔦屋書店もイベントスペースで開催し始めた。大手の書店が場を提供する。そこで人と人とが繋がる。その人たちの口コミは強い。本をベースに話し合って、生きがいを見つけた人はどうなるか。本屋でそんないい思い出があったら、友人ができたら、その場に戻ってくると思いませんか。気付きを得た場所には人は戻り続ける。

どういう書店が残っていくか。本を買いに来る場所ではなく、本好きの人を集められるか。本だけでなくそれ以外の楽しさもすべて。本を買っている人のデータから次の時代を読み、サービスを提供する。いかに次の活動、本だけでなく学校やレクチャー、データをもとに企画を立案。

図書館の使命は知識の創造。アレキサンダー大王が最初に作ったものは図書館。知は世の中を変える。本に関わる人はその責任を負うべき。

著者も読者もお互いに教え合う。新入社員に50代がオススメする本を読んでもらう。50代が若い人の考えることわからないというのであれば、20代のオススメ本を50代に読んでもらう。就職でもそう。会社説明会ではなく、業界研究や社長の本の読書会をおこない、その中で活発な子を人事は見抜けばいい。不動産であれば一緒にまちづくりを検証する。巻き込む場が作れる。

言葉の持つ力は半端ない。我々はそれをどれだけ信じられているのか。消費されているだけでは言葉が可哀想。著者にはその責任がある。気概を持って書いた言葉は必ず必要な人に届く。1000部であろうが2000部であろうが届くべき人に届く。言葉の力を信じて、言葉の力を発揮できる立場であることを幸せに思って著者や出版社は発信すべき。まぁ無理でしょうけど。でも一緒にやりたいと思ってくれる人はやりましょう!

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