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ブルー・オーシャンという言葉に対する誤解と思い込みについて

2014/11/24

最近、言葉の使い方の誤りを耳にする機会があってですね。いや、実際、昔は僕も使い間違いをしていたので、それについてどうこう言うつもりはないのですが、きちんと知っておくといいかなぁと思って記事にしてみました。

それは「ブルー・オーシャン」という言葉についてです。「ブルー・オーシャン」というのはブルー・オーシャン戦略――競争のない世界を創造する (Harvard business school press)という書籍から使われることになった言葉で、今では一般的にビジネス用語としても使われています。

ブルーオーシャン戦略

で、このブルー・オーシャンという言葉を誤解している人が結構居るので、以下、引用とそこそこ長めの解説をしていきます。いや、ちゃんと理解してるよという人はそっとブラウザを閉じてください。

特にビジネスの界隈では「ブルー・オーシャンを探せ」という人が時々居ます。でもこの本にはそんなこと書かれていません。ざっくり言うと、ブルーオーシャンは自らが創り出すものだと書かれています。しかも、苦労して創り出したブルー・オーシャンはすぐに競争のレッド・オーシャンになるので、一瞬、息継ぎして再度赤い海で戦える体力を蓄えろって言ってるだけなんです。

競合他社に打ち勝つただ一つの方法は、相手を負かそうという試みをやめることなのだ。

18ページより

レッド・オーシャンとは今日の産業すべてを表す。つまり、既知の市場空間である。かたやブルー・オーシャンとは、いまはまだ生まれていない市場、未知の市場空間すべてをさす。

19ページより

レッド・オーシャンでは、絶えずうまく泳ぎ続けることが、いい換えればライバル企業との競いあいに勝ち続けることが重要である。レッド・オーシャンはつねに重要であるし、ビジネスの世界からけっして消えてなくなりはしないだろう。

~中略~

企業はレッド・オーシャンでの競争に明け暮れるだけでなく、新たな利益機会と売上機会をつかみ取るために、ブルー・オーシャンを切り開いていかなくてはならないのだ。

だが残念ながら、ブルー・オーシャンについては海図など存在しない。

20ページより

19ページとか20ページってホント第一章の最初の最初です。そこにこの本の全てが書かれていると言っても過言ではありません。残りの250ページの内容的には、シルク・ド・ソレイユやワインメーカー(イエロー・テイル)、航空会社(サウスウェスト)などの事例をベースに、ブルー・オーシャンの生み出し方を解説しているだけです。独自性の生み出し方やポジション分析、市場分析、新たな価値の創出方法など、ぶっちゃけ、そんなに目新しい内容はないのですが、「ブルー・オーシャン」「レッド・オーシャン」という言葉を生み出したのがこの書籍の一番の価値だと感じています。

ブルーオーシャンを探せ・見つけろというのは、どこかに誰にも侵されていない、夢の様な場所があると思いがちですが、そもそもそんなものは存在しません。あなたの力で創り出すことで初めてブルーオーシャンは生まれるのです。ゼロ・トゥ・ワンでピーター・ティールが「独占しろ」と言っていますが、これもブルー・オーシャンのことを指しているわけです。

そして、もう一つ言うと本書ではレッド・オーシャンが悪いだなんて事も言っていません。よく、ブルー・オーシャンが善で、競争が激しいレッド・オーシャンが悪だと思われがちですが、本書内ではレッド・オーシャンもビジネスでは重要な要素の一部だと言っています。しかもレッド・オーシャンでの競争の勝ち方についてはマイケル・ポーターの競争戦略から学んでね的なことも書かれています(21ページ脚注[3])。

気を付けていろいろな会話を聞いていると「ブルー・オーシャンを探せ」と言っている人は本当に多いんです。で、ふと、全員が全員、誤読しているのかなぁと考えたのですが、もしかしたら違うんじゃないかと思えてきました。それは「ブルー・オーシャン」というフレーズがあまりにもキャッチーで、しかもイメージしやすい簡易な単語の組み合わせなので、書籍を読んでいない人が本当の意図とは違った認識で利用しているのではないかという仮説に至ったわけです。

なんでこのような仮説に至ったかというと、「ブログ飯」って単語もそうなんですよ。キャッチーでインパクトのある単語なので、ブログだけで生活する意味みたいになってますが、書籍内では「リスクを分散化しろ」ってしっかり書いています。1つのブログだけに頼るようなことは避けましょうと158~159ページに書いているのに、そこにはあんまり触れてもらえないんですよ。

見えていないのか、覚えていないのか、重要と感じなかったのか、それともそもそも書籍自体を読んでいないのかは分かりませんが、人の眼と脳って意識しないと気付かないんですよね。なので(完全に余談ですが)僕は、「ブルー・オーシャンを探しましょう」とか言ってるコンサルタントは信用していません。

書籍って丁寧に読むと、今までとは違った気付きを得る場合もあります。僕の場合は、一時期ビジネス書ばかり読んでましたが、今では日本語なのに何を言っているのか理解できない哲学書だとか学術論文的な書籍、歴史書、果てはスピリチュアル的な書籍も読んでいます。様々なジャンルの書籍を読むことで、1つの言葉に対する解像度が上がるんですよね。

この辺の内容についてはこの記事で述べてます。
僕が本を読む時に気をつけているポイントをいくつか

あれ?そんなこと書いてあったっけと思われた方は再読してみてはいかがでしょうか?(新版が出てますね)

[新版]ブルー・オーシャン戦略―――競争のない世界を創造する (Harvard Business Review Press)

[新版]ブルー・オーシャン戦略―――競争のない世界を創造する (Harvard Business Review Press)

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