<景品表示法に基づく表記>当ブログでは商品・サービスのリンク先にプロモーションを含みます

いつか本を出版したい人のための、書籍出版完全マニュアル

2023/06/01

多くの人が、「いずれ出版してみたい」と心のどこかで思っているのではないでしょうか。

自分の本が紀伊國屋書店や、地元の本屋さんに並ぶのを夢見てる人だっているはずです。

ありがたいことに僕はこれまで46冊の書籍に関わらせてもらっておりまして(インタビュー協力などを含めると50冊を超えます)、僕の経験が少しでも役に立てばと思い、出版にまつわる情報を発信していきます。

今回の内容は技術書メイン(軽くビジネス書・実用書分野含む)なので、小説を出したい、コミックスを出したいという人にはちょっとズレがあるかもしれませんが、共通項目も多く含まれているはずなので、そのような視点で読んでもらえると嬉しいです。

実は今回、アドビさんの「みんなの資料作成」という企画に参加させていただくこととなり、この記事を執筆しました。

「なぜ資料作成がテーマなのに、出版の話をするの?」と思われるかもしれません。それは、提案資料の作成スキルは商業出版にも繋がるからです。

提案資料も書籍も「読み手に情報を伝え、行動を起こしてもらう」という目的は同じです。そのため、日ごろ提案資料を作成している方なら、その延長線上で書籍も執筆できるはずです。(もちろん書籍は資料よりも文章量が多く、執筆に時間はかかりますが)

自分がもつノウハウを書籍の形で世の中に広めたいという方は、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

著名人でも芸能人でもスポーツ選手でもない、普通の一般人でも出版する3つの方法

書籍を出版する方法は大きく分けて3つあります。

まず1つ目の方法が自費出版、あるいは企画出版(協力出版)といった、自分で費用を負担する出版方法です。2つ目の方法は、Kindleを中心とした電子書籍の出版、そして3つ目が商業出版です。

1.自費出版・企画出版(協力出版)

自費出版は、自分が費用を出して著者自身で販売(配布)することを前提に、出版社(印刷会社)に依頼して書籍を作成することを指します。

自費出版は出版社側のリスクがほとんどなく、売上に直結するので、積極的に取り組んでいる会社も多いです。

著者側のメリットとは、商業出版と比べて自分の好きなテーマ・内容で書籍を作ることができるという点が挙げられます。

商業出版の場合、出版社が在庫リスクを抱えるため、売れる(世間に求められている)テーマでないと企画が通りません。一方で自費出版は制作費を著者が負担し在庫リスクを回避できるため、著者の希望通りの書籍が作れるわけです。コミックマーケットのような同人誌即売会で販売している書籍も自費出版に該当します。

また、自分で費用を負担する出版方法に、企画出版(協力出版)という方法もあります。

企画出版と自費出版との大きな違いは、書店流通に乗るかどうかです。サービスプランによって、部数の増加や、プロモーションの規模が変わってきます。

会社経営の経験がある方だったら、出版社から以下のような営業を受けた方もいらっしゃるかもしれません。

「出版を企業PRに活かす企画があるんですけど、御社の社長さまのビジネス哲学を書籍にしてみませんか。つきましては1万部を刷って、新聞広告を掲載して、書店の一番いい場所に陳列して、ポスターもポップも掲載して、全面サポートします。もし原稿を書く時間がなければブックライターも手配します。予算ですが一式1000万円です」

この仕組みが良い悪い・好き嫌いは置いておいて、「会社としてPRの予算が余っていて、来期に繋げられるような施策を打っておきたい。できれば世間的に評価される方法で」と考えているのであれば、出版は立派なツールになります。なぜなら一般的には「本を出す=ステータス」だからです。

会社の社長が自伝を出して、就職活動中の学生に無料で配布しているのも一つのPRです。

2.電子書籍

2つ目の出版方法が電子書籍です。これも必ず出版できます。

自分ひとりで文章を書いて、ページを組み上げて、そのまま電子化してAmazonなどの電子書籍ストアに並べる、たったこれだけで電子書籍の出版は可能です。印税についてもAmazon Kindle独占販売であれば最大70%の印税率にすることも可能です。

他の電子書籍ストアでも販売したい場合は印税率が30%になりますが、それでも紙の書籍に比べたら大きな報酬率になります(紙の書籍は一般的に8%前後)。

ただ、第三者の視点(要は編集者)が入っていないため、表現を磨けていなかったり、書籍として読者が満足する情報量を提供できていなかったりします。実際に、電子書籍は内容の質に大きなばらつきもあります。

さらに、電子書籍リーダーやスマートフォンでしか読むことができず、一般書店に並んではいないことから、「私、出版してます」と言ってもWeb界隈以外の人からはなかなか信頼してもらえない場合があります。

出版の実績として認められにくいんですよね。

3.商業出版

3つ目が、本題の商業出版です。出版社の予算で書籍を作成し、全国の書店やAmazonなどのネット書店に並んでいる状態を指します。

商業出版というと、有名人や著名人しか出版できないというイメージがあるかもしれませんが、まったくそんなことはなくて普通の人でも出版できます。

書店を一周してみてください。あなたの知っている著者はどれだけいますか?9割以上の著者は初めて見た名前のはずです。あなただってその9割の中に入り込むことは可能です。

僕は通算で46冊+αの本に関わっていますが、僕の能力が際立っているかというと全然際立っていません。

芸能人やスポーツマンでもありません。一応、会社を経営していますが、世間に対する影響力なんてほとんどありません。でも46冊の実績があります。普通の人間にもかかわらずです。

自分が普通だと思っていることって、第三者から見たら異常値かもしれません。その独自性から法則を導き出し、誰が読んでも理解できるように翻訳し、世界に向けて発信するチャンスは誰にだってあります。

やり方を知って、挫けずに実践することで、チャンスの神様の髪の毛は次第にフサフサになっていくんですよ。何回握り逃したって、最後にむしり取ればいいわけです。

出版業界の実情

ここで一旦、出版業界の実情について解説します。染谷視点で書いているので、多少ずれがあるかもしれませんが、大枠合っているはずです。

最近の出版業界といえば、「本が売れない」「書店の閉店が相次いでいる」「出版取次(いわゆる卸問屋)が経営危機」「学生が本を読まない」などといった、暗いニュースばかりが目立ちます。

この記事を書くためにいろいろな資料を読み込んでいるんですが、確かに悪いニュースの方が目立ちます。

とはいえ、すべてダメかと言うとそういうわけでもありません。

業界全体は縮小傾向にあるものの、中堅どころの出版社や大手書店は奮闘しています。大手と小規模の出版社と小規模書店、そして出版取次の経営状況は厳しいという傾向にあります。

帝国データバンク 特別企画:出版関連業者の経営実態調査

売れない売れないと言われている書籍ですが、年間で何十万部と販売されているものもあります。今回の記事にも関連するので、ビジネス書・実用書ランキングを事例に解説します。

ビジネス書・実用書 年間ランキング2021

※2022年のランキングも出ているのですが、2021年の書籍が特徴的だったので2021を事例に使っています。

1位は800ページ近い大長編の「独学大全」。2位以降売れている書籍の傾向としては、30分で読めるライトな感覚の書籍やマンガでわかるシリーズ、あるいはサピエンス全史やファクトフルネスのような海外のゴリッとした内容を翻訳したものが好まれています。

とはいえ、全体的には販売部数は96年をピークに減少を続けています。

一方、世に出る新刊の数はどうなっているのでしょうか。実は紙の本が売れていない(販売部数が減少している)のにもかかわらず、毎年70,000点もの書籍が発売されています。

「日本の統計」第26章5項より

それに対し、本を読む人は減っているといわれています。第58回学生生活実態調査によると、1日の読書時間が「0分」の学生は46.4%だそうです。

http://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html

まとめると、本を書いている人(新人からベテラン著者まで)は増え続け、読みたい人は減り続けているわけです。著者数が読者数を逆転するという笑い話も現実になるかもしれません。

それでも出版社が本を出す理由

出版社が新刊を出す理由としては、素晴らしい知識を世界に広めたい、新しい才能を発掘したいというポジティブな考えがもちろんありますし、書店の陳列棚を空にしたくないという営業的な側面もあります。

ですがキャッシュを得るという理由も少なくありません。

出版社は新刊を発売し書店取次に出荷した時点で売上が立ちます(お金が入ってきます)。書店で売れた時点で売上になるわけではないんです。もちろん、売れない本は返本されるので、先に出版取次から支払われた金額を返金する可能性もあるのですが、返本が発生するのは数カ月後です。

自転車操業というとイメージが良くないですが、要は新刊を出しさえすれば目の前のキャッシュが会社に入ってくるわけです。だからこそ出版社は毎月のように新刊を出し続けるわけです。新刊を出さないとキャッシュフローが回らなくなり、資金繰りが苦しくなるんです。

「旅人にとっての宿(逆旅げきりょ)のような、人生の休憩場所や分岐点をつくる」を理念として、制作・出版業を行う逆旅出版です。 このページでは、私達の目線から 出版…
www.gekiryo-pub.com

↑書籍の流通の仕組みはこちらがわかりやすいです。

というわけで、年間70,000点をクリアするために、実績のある著者が定期的に発刊する書籍はもちろんのこと、数多くの著者のデビュー作が世に出ます。芸能人やプロスポーツ選手や医学博士などが、いままで培ってきた経験やノウハウをシェアするために書籍を使い、その知識や実績や知名度によって販売冊数を伸ばしています。

一方、売れていない著者は出版の舞台から退場していきます。

しかしながら、この文章を読んでいる人の多くは芸能人でもスポーツ選手でも医学博士でもないでしょう。それでも出版は可能ですし、ベストセラーは難しくてもロングセラーとして長く愛される書籍を創り出すこともできます。

僕は2023年5月時点で46冊の書籍に関わっています。

でもブログ飯という書籍を出版するまでは、ブロガーを名乗る絶賛無職でした。もちろん、狭い一部の限られた業界以外ではまったくの無名ブロガーです。そんな人間でも一段一段、階段を登っていけば大きな結果につながっていくわけです。

出版のきっかけの生み出し方

僕がどのような経緯で出版しているのかを述べておきます。読んでもらうとわかりますが、そんなに特別なことはやっていないです。

1作目が『WordPressプラグイン辞典』。この書籍は8人くらいで書いた共著です。

著者に加わったきっかけは、WordCamp TokyoというWordPressイベントのお手伝いをしたときに、イベントの執行部メンバーから書籍を一緒に書かないかと誘われたことです。

2作目。僕の代名詞になっている『ブログ飯』です。

この本も実は人との繋がりで生まれています。当時「Xperia非公式マニュアル」というブログを運営していた僕は、「日本Androidの会」というグループが主催したイベントのお手伝いをしていました。そのグループの広報担当が、インプレスという会社の編集担当だったんです。

その当時、いわゆるプロブロガー本がインプレスから発売されていたんですが、「ブログ運営テクニックではない、違う角度からブログの運営について書けますけどどうですか?」と相談したのがきっかけです。

ちょっとした思いつきで提案したら話がトントン拍子に進んで、では企画書つくりましょう、書き始めましょうという流れで出た本です。

3作目が『ネットショップの教科書』です。

この書籍もWordCampに出版相談ブースとして参加していたSBクリエイティブの編集さんがいて、その編集さんが「ネットショップの本を書ける人を探してるんですよね」と言っていたので「(ネットショップなんてやったこと無いのに)僕、書けますよ」と言ったのがきっかけです。

すごい適当に決まってるんです、僕の本って。でも「やります!」って言っちゃうのが一番強いんです。チャンスの神様の前髪をどれだけむしり取れるかなんですよ。

とはいえ、ネットショップを成功させるノウハウはわかっていたものの実務に乏しいので、ネットショップ業界のリサーチをおこなったり実際に店長経験のある人を共著に巻き込んだりと、企画が決まってから発売まで1年半もかかったのはなかなかつらい思い出です。

4作目の『Google AdSense成功法則』については完全にイレギュラーパターンです。

僕、WordCampのメンバーと一緒に匿名ブログを書いていたんです。染谷昌利という名前を出さずに。そのブログ内でGoogle AdSenseの攻略法を書いたんですが、その記事一本で1日10万PVぐらい叩き出したんです。はてなブックマークで2,000以上のブックマークを集めました。

投稿のキャッチコピーを表示(ACFを有効化し"catchcopy"というキーでフィールドを設定してください)投稿のサブコピーを表示(ACFを有効化し"subco…
wp-d.org

その記事を読んだ編集さんから、「この記事をベースに書籍を書いてほしいんですけど」と問い合わせが入ったのがきっかけです。名前すら出してないのに執筆依頼が来るというのは驚きでした。

編集部に挨拶に言ったら「あー、ブログ飯の人ですか、なるほど」と言われてすぐ出版決まったんですけど。なるほどってなんだよ。

5作目の『できる100ワザGoogle AdSense』は、ブログ飯とおなじインプレスから出版しています。この本はブログ飯の担当の人が社内で紹介してくれて決まりました。

6作目の『WordPressプロフェッショナル養成読本』。これもWordPress界隈の人に誘われて書いています。

7作目以降は、すべて出版社からの依頼です。

『アフィリエイトの教科書』に関してはGoogle AdSense成功法則が3刷まで伸びていて、「実はアフィリエイトのこと書ける人探してるんですよ」と相談されて、「じゃあ書きますよ」と言って秒で決まりました。

一人で書いてもよかったんですけど、一人で書いても面白くなかったんで、イケダハヤトさんを誘って書いてみました。

『コンテンツマーケティングの常識』は企画書すら作ってなくて、出版社が企画書を作って、僕に依頼が来ている形です。

ブログの教科書にいたっては、編集担当から「いつ書き始めるんですか?」といきなり言われています。知らないところで編集会議通ってるの怖いよ。

2017年以降は、いろいろな専門性を持った人たちに出版のステージに上がってもらうよう心がけて活動しています。目立つのは僕じゃなくて良いんです。次世代にチャンスを掴んでもらいたいんですよ。

僕は「ギガ盛りブログ飯」というオンラインサロンを運営しているのですが、出版社から僕に企画の相談が来て、サロンメンバーにそのテーマで書けるかどうか手を挙げてもらって、一歩踏み出してくれた人と一緒に1冊の本を作り上げるという活動に力を入れています。

普段から僕のことを知ってる人はご存知だと思いますが、僕は特別な何かをやっているわけではありません。

ちょっと筋トレ好きの普通の人なんですよ。でもそんな筋肉質な普通の人でも、3冊4冊と出版経験が増え、2刷3刷と増刷回数が伸びてくると出版社側から話が来るようになります。結果を出せばどんどん未来に繋がっていくんです。

出版社は文章を書ける人を常に探しています。情報発信者の中にも出版を目標に掲げている人は多いと思います。

でも、なぜか出版社と情報発信者の間には高い壁があって、お互いの想いや情報が全然届いていないんです。結果として、実績がある人に依頼が集中するという出版業界の傾向があります。この傾向は出版業界だけじゃないかもしれないですけど。

あなたの専門分野はなんですか?

書籍を出版したいという「想い」は大切です。

「いつか出版したいんです!」とか、「私の経験やノウハウは絶対に役立つはずなんです!!」とか、「企画書作りました、見てください!!!」とか、いろんな相談を受けます。

書籍を出版したいという「想い」は大切です。でも現実社会的には「実績」も重要です。想いに実績が伴っていないと、商業出版の企画としては通りづらいです。

では実績とはなんでしょうか。

僕は正直、なんでも良いと思っています。誰にでも「得意分野や好きな事=専門性」があります。でもこの専門性は自分で掘り起こさないと見つけることはできません。

僕が探しても、家族が探しても、友人が探しても、パートナーが探しても見つかりません。カバンの中にもつくえの中にも入っていません。向かいのホーム、路地裏の窓、こんなとこにいるはずもないのに。

専門性は自分自身で、自分の中から掘り起こしてもらうしか無いんです。好きなこと嫌いなことを、とにかく書き出すというアナログ的なやり方でもいいです。Wordに打ち込むのもOKです。マインドマップでも構いません。

ブログを書いてる人だったら、自分の古い記事を読み漁ってみるのも良いでしょう。数年前の自分の稚拙な文章に赤面しながら、得意分野だと思う内容を洗い出していくことも効果的ですし、他の発信者と違うポイント、尖ってるんじゃないかというポイントを見つけ出すことも一つのやり方です。

強みを見出したら、その武器を鍛えていく必要があります。

鍛えるとはなにか。それは再現できるかどうかです。

偶然、一回できただけでは強みではありません。運が良かっただけです。運が良いというのも一つの強みではありますし、運勢の上げ方もあるんですがここでは割愛します(※ラピスラズリ買って、札束入りのバスタブに入れとかいうのではありません)。

僕の場合、スマートフォンの使用法&おすすめアプリ紹介のブログで一定の実績を作り上げました。ただ、その成功はマグレかもしれません。ですから同様のブログを他に4つ運営してみました。

多少の誤差はありましたが、ページビューの伸ばし方はまったく一緒で問題ないという検証結果がでました。収益化についても同じ方法で実現できました。なおかつ3年近くの期間、それぞれのブログで月間100万ページビューを超える、あるいは近い数値を出し続け、そしてブームが去ってページビューが落ち込んでいくという悲しい体験もしました。

これらの経験から、ブログのアクセスの伸ばし方や収益化方法、そしてマインドセットの重要性という武器を鍛えることができたわけです。撤退のタイミングと重要性についても説明できます。ほら、自称ブログの専門家の出来上がりです。

でも専門性って・・・、残念ながら上には上がいるんです。

自分の土俵を創り出しトップランナーになる 

僕のポジションって微妙で、ブログのページビューで勝負したら化物みたいな人ってたくさんいるんです。収益額をみても僕より上の人って山ほどいるんですね。

書籍についてもブログ飯とかさ、一生懸命250ページ以上の文量を書いても、8ページ程度の鬼嫁コラムの方が面白いとか言われるぐらい文章力も大したことないんですよ(やさぐれ)。

でも、得意分野の組み合わせ、たとえばブログ運営のことだったり、複業(副業)のことだったり、収益化のことだったり、出版のことだったりとか、筋トレのことだったり。情報を組み合わせて話すことができるのは僕だけです。いくら収益額が大きくても、人前に出て喋るのが苦手な人もいるわけですから。

Webで表現したり、講演で表現したり、紙媒体で表現したりできることも独自性です。

自分は何が得意で、逆に何が苦手で、何を組み合わせたら自分だけのポジションを生み出せるのか、そこをしっかりと理解しておく、認識しておくことによって、自分自身の強みとして売り出すことができます。 

これがブルーオーシャンです。一つ一つの能力はたとえ1.5流レベルでも組み合わせによってトップランナーになれるんです。よく「日本で2番目に高い山は覚えてもらえない、だから2番手に意味はない」的な陳腐な言葉を聞きますが、2番目でも複数組み合わせれば立派な独自性になるんです。

得意分野は、同じことをしているだけでは増やせません。適度に負荷をかけること、背伸びをすることが大切です。

僕は3作目でネットショップの書籍を書いてるんですけど、僕自身はネットショップの運営なんてやったことないんですよ。それでよく手を挙げたなって話なんですけど、ネットでの集客の仕方や、物の売り方の原理は学んでいたので大枠は分かるんです。ブログで集客して、アフィリエイトで販売するということも何年もやってますしね。

ただ、実際に在庫を持って、お客様と対応して、商品を発送するなどの実務が分からないので、ネットショップの店長経験がある人に共著に入ってもらいました。背伸びした分の足りない知識は、必要に応じて身につけていけばいいんです。実践が一番学びになります。

同じことを反復練習することは確かに重要です。でも、一つ上のステージの学びを得る、隣のカテゴリの文化を知ることによって、得意分野の幅は広がっていきます。自分のエリアが広くなればなるほど、組み合わせによる独自性を増やすことができ、オンリーワンになって、結果としてナンバーワンになれるわけです。

参考までに僕がお手伝いした書籍の著者の強みを掲載しておきます。敢えて「女性」という言葉を多用していますが、技術書の著者は男性が多いんです。ですから女性視点というだけで、男性が書いた書籍との差別化ができます。

さらに一つだけの強みではなく、複数分野を組み合わせることによって独自性を際立たせています。

1.Webライターの強化書

利倉夏実さん

組み合わせ:女性ライター、Webライティング、クラウドソーシング活用術、月額20万円超の実績

時流:WELQ問題、Webライターの需要増

2.はじめてのブログをワードプレスで作るための本

じぇみじぇみ子さん

組み合わせ:女性デザイナー、テクニカルサポート経験、ブログデザイン術、女性視点での解説

時流:WordPressの一般化、未経験者向けの書籍ポジションが空白

3.アフィリエイト上級バイブル

齊藤ミナヨシさん

組み合わせ:齊藤さんのアフィリエイト実績、ASP交渉術、外注マニュアル

時流:上級者向けアフィリエイトの書籍ポジションが空白

4.本気で稼げる アフィリエイトブログ

亀山ルカさん

組み合わせ:元OL、ブログアフィリエイト実績、20代女性視点、圧倒的文量

時流:女性著者のブログ解説書の書籍ポジションが空白

5.「Googleマイビジネス」超集客術

戎井一憲さん

組み合わせ:SEO、飲食店サポート、Googleマイビジネスの専門家

時流:Googleマイビジネス唯一の解説書(当時)

時流に乗ることと普遍性とのバランス

世の中に永遠に続く物事はありませんし、時代によってトレンドがあります。ブームにはある程度法則があって、螺旋階段状に行ったり来たりしながら進化していきます。

根底に流れる普遍的な考え方と、時流に乗ったテーマを選択することでポジションを獲得することができます。新しいテクノロジーの場合は専門家が存在しないわけですから、一気に情報提供することで、他者の追随を許さないことだって可能なわけです。

僕の場合はスマートフォンやブログの収益化のポジションがそうです。VRやメタバース、仮想通貨、ChatGPTと、時代によって必要とされる情報は変わります。変化を敏感に感じ取り(感じ取れる感覚を養い)、必要とされる情報を発信し、世間の評価を集めましょう。

時流に乗る際に注意しておきたいことが一つあります。それは撤退のタイミングを見誤らないという点です。

一過性のブームで終わるか定番になれるか。これってビジネスを継続していくために、常々意識しておきたいポイントです。去年流行したものが1年以上売れ続けていれば(話題になっていれば)定番商品と位置づけても良いでしょう。でもそんな商品やサービス、エンタメ、情報はほんの一握りです。ほとんどが数ヶ月で前線から消えてしまいます。

別に一過性が悪いと言っているわけではないんですよ。消費サイクルが短いと認識しているのであれば、次々と新商品やサービスを展開し続ければいいわけです。でも「これはずっと売れ続ける!」と、未来を見誤ると気付いた時には身動きが取れなくなってしまいます。みんなが危ないと気付いた頃に対策を考え始めても手遅れなんです。

僕の人生を大きく変えた「Xperia非公式マニュアル」というブログがあります。このブログ、実はGoogleに「Google AdSense成功事例」として紹介された実績もあるのですが、現在このブログはほとんど更新していません。僕の人生を変えて、収益の柱で、さらにGoogleからも評価されているにもかかわらずです。

なぜ更新しなくなったのか。もちろん、ブログ飯を書き始めて時間がなくなったという現実的な理由や、そもそも飽きたという要素もあります。でも一番強い要素は、以下の言葉を聞くことが多くなったからです。

それは

「昔、よく読んでました」

というフレーズです。

言われ始めの頃は「何だとこのデコ助野郎」と心の中で舌打ちしていたんですが、様々な会合で自己紹介した際に同様のフレーズを聞くことが増えてきました。その発言の多さに、「今はスマートフォンの解説サイトって読まれてないんだ」と察したんです。

当時は確かにアクセス数も右肩下がりになっていましたが、そうは言っても一日1万を超えるユーザーが訪問してきてくれました。でもどんなに更新しても、どんなにSEOを意識しても、どれだけSNSで響きそうな刺激的な記事タイトルにしてもアクセス数が大きく伸びるという現象は起きませんでした。

「昔、よく読んでました」

このフレーズはスマートフォンメディアのブームが終わっていく前兆だったんです。僕は幸運にもそれに気付いたので(そう判断したので)、軸足を次のステージに移す準備ができました。Xperia非公式マニュアルにしがみついていたら、今の生活は維持できていないかもしれません。

時代は気付かぬうちに移り変わっています。コンテンツ至上主義から、コンテンツが良いのが当たり前で誰が発信しているのかというコンテキスト(文脈)が重要な時代へ。完成された楽曲をCDで聞いていれば満足だった時代から、配信での聴き放題と並行してライブや握手会などユーザー参加型の二極化時代へ。重厚な学術書や純文学からポップでライトな書籍の時代へ。

時代の流れは自分一人で変えることはできません。抵抗してもがくのも悪くはないのかもしれませんが、時代の流れを感じ取って、その波に乗った方が少ないエネルギーで成功に近づくことができます。

時代の流れに乗るためには、小さな予兆や前兆に気付かなければいけません。そのためにはちょっとした変化を敏感に感じ取る必要があります。

変化を感じ取るためには意識的にアンテナを張り巡らせて生活することが重要です。

ふとしたキーワードを聞き逃すか、ヒントと捉えるか。通勤時間の1時間を周りの変化の観察時間に充てるのか、ただスマホでゲームをしているのか。時代を感じ取るトレーニングを1日だけやって飽きてしまうのか、1週間かけてじっくりテータを収集するのか。

やるかやらないか、変化に気付くか気付かないかは、あなた次第です。

編集担当に興味を持たせ、営業担当に売れると感じさせる企画書を作る

商業出版するためには、出版社が興味を持ってくれる企画書を作る必要があります。 

どんな本を作りたいのか。読んでもらいたい人はどんな人なのか。内容(目次)などをまとめていきます。企画書のテンプレートは検索すれば出てきますので、その形式に沿って書いていっても良いでしょう。

しかしながら企画書は本のアイディアが書いてあるだけではダメです。その本が売れるのかどうかを出版社にアピールしなければなりません。

出版社は売れる本を求めています。内容が濃いのはもちろんですが、その本が世間で受け入れられるのかどうかも記載しておきましょう。業界の大きさ、自分のブログや友人のブログでの拡散、講演会などでの直販。少なくとも初版分は完売できそうというイメージを、出版社の営業担当に感じて貰う必要があります。

そうは言っても、そもそも企画書を提出する編集さんとどう知り合えばいいんだという疑問もあると思いますので、最初に編集さんとのコネクションの作り方について説明します。

編集者と知り合う3つの方法

この項では編集者と知り合うための方法を3つ紹介します。

  1. 出版社に企画を持ち込む
  2. 編集者と知り合いになる
  3. 出版エージェントに依頼する

この3つをそれぞれ解説します。

1つ目の方法が、いわゆる持ち込みです。

出版社に直接コンタクトを取って、企画や原稿を見てもらうアレです。マンガ家を目指す人によく見られる光景ですね。マンガならまだしも実際にそんなことできるの?と思うかもしれませんが、検索してみると出版社の門戸はかなり開かれています。

とはいえ、門戸をオープンにしているということは、それだけ応募も多く、競争が激しい可能性が高いです。

2つ目の方法が編集者と知り合いになることです。

「編集者と知り合いになれって簡単に言うなよ」と思いますが、意外と簡単に会えます。要は編集者が居そうな場に行ってみればいいのです。第一章でも書きましたが、僕の場合はボランティアで参加している団体の中に編集担当が居たり、イベント内で出会ったりと、不思議なきっかけで編集者と出会っています。

他にも著者と仲良くなるという方法もあります。書評を書いてブログで公開したら、著者はすごく喜びます。少なくとも僕は喜びます、チョロいです。書評記事をきっかけに著者と仲良くなることだって可能です。あるいは好きな著者の出版記念パーティに足を運んでみても良いでしょう。

著者の背後には必ず編集者が居ます。書評やイベント参加などで、著者や編集者と仲良くなって、例えばFacebookのウォールに得意な分野の情報をさりげなく(さりげなくがポイント!押し付けがましいのは駄目です)掲載して興味を持ってもらうなど、いろいろとやれることはあります。

3つ目の方法として、出版エージェントにお願いするということも考えられます。

出版エージェントとは何十人もの編集者と本を出したい人を繋ぐ役割で、あなたの企画書をチェックし、編集者に届けてもらうサービスです。出版が決まれば売り上げ(印税?)の何割かを手数料として支払う仕組みです。「企画のたまご屋」さんが有名ですね。

企画書を出版エージェントに委託することで、興味のある出版社を探してくれます。

僕も出版エージェント(出版プロデュース)を手がけていますが、現状はオンラインサロンメンバーを中心に運用しています。報酬形態は成功報酬型で、初期費用無料で印税分配のスタイルです。なぜならサロンの特典の一部として考えていて、メンバーの次のステージを応援したいからです。

何十万円もの初期費用を設定している出版エージェントもいます。別にお金を取ることは悪いことではありません。企画書の時点からサポートするには物凄い時間と労力が必要になります。エージェント側も仕事として(報酬を得て)受けなければ、自分自身の生活に支障が出てしまいます。

とはいえ、あまりにも高額な初期費用については疑問が残るところです。目安としては、がんばって著書を売ることで得られる印税額とのバランスで決めれば良いかと思います。

例えば、「書籍価格1,500円 x 10,000部 x 印税10%」とすれば、150万円の印税が見込めます。この範囲内で初期費用が支払えるのであれば、自分の実績づくり、ステージの向上に投資するのは悪くないでしょう。第一章で解説した出版プロモーション企画と一緒の考え方です。(計算しやすい数値で算出しているので、現実はもっと低額の可能性が高いです)

この辺りは個人個人の考え方によって相違がありますので、自分にあったスタイルを選択しましょう。

企画書作りのポイント

出版を目指すためには、出版社が魅力を感じる企画書を作る必要があります。大きく分けてポイントは3つです。

  1. 世の中の役に立ちそうか?
  2. 信頼感のある人が書いているか?
  3. 売れそうか?

1.世の中に役に立ちそうか?

読んでくれた人に役立つ、もっと大げさに言えば世界にインパクトを与えられる未来を出版社に見せる必要があります。あなたの持っている知識、経験、ノウハウ、熱量をすべて企画書に落とし込みましょう。

2.信頼感のある人が書いているか?

誰が書いているのかというのは非常に重要です。専門家になることの大切さについて述べましたが、「この人が言っているのであれば間違いないだろう」という信頼感が必要です。根拠のない自信でもいいんですけど、であれば比類ないオーラを醸し出せるようになってください。

3.売れそうか?

最後に売れそうかどうかです。出版したいと思っている人は多いのですが、この3つ目の視点が抜けている場合が多いです。出版社は営利企業ですから、売れない本にコストを投下する意味はないのです。

自分が書きたいテーマのマーケット規模をしっかりと明示しましょう。自分の協力者がどれだけいるのか、ブログ本であれば想定読者層(たとえばライブドアブログが◯◯万人、アメブロが△△万人とか)がどれだけいて、自分自身でこれだけ拡散できるということを書くだけで売り上げの目安が立ちます。結果として企画が通る可能性が高まります。

3つの要素のバランスを高い位置で成立させることで、出版の道は開けていきます。

出版社の編集者は良い本を作りたい、営業部は売れる本を作りたいと思っています。そのため、編集会議向けには「こだわりや独自性」、営業会議向けには「売れている類書や販売見込み」と、企画会議に合わせてアピールする内容を変えることも大切です。

企画書に入れる項目

出版企画書に入れる項目はある程度決まっています。

だいたい、以下の項目をA4用紙2~3枚で簡潔にまとめて提出するのがお薦めです。自分の想いを長々と書いても、編集者は暇ではないので読まれない場合があります。必要な内容を適切に、漏れなく記載しましょう。

  1. タイトル
  2. サブタイトル(キャッチコピー)
  3. 本書の内容・目次案
  4. ジャンル(ビジネス書、技術書、実用書など)
  5. 著者名・プロフィール
  6. 企画意図(背景)
  7. 想定読者層
  8. 類書
  9. 類書との差別化
  10. 販売施策

企画書時点では仮タイトルとして入れておけばOKです。出版が決まった場合、書籍のタイトルやサブタイトルは最終的に出版社が決定します。キャッチーなタイトルであればそのまま使われる場合もありますし、大きく変更される場合もあります。

プロフィールについては、どのような実績があるのかが分かる内容を記載します。企画意図は、なぜ「今」この本を出す必要があるのかという点を明確に載せておきましょう。

7、8、9についてはそのままの意味で、どのような人が読者になりうるのか、類書(ライバル書)で特に売れている書籍はどのようなものか、類書と比較して自分の本はどう違うのかを記載します。

最後に販売施策です。この項目は必須ではないのですが、僕は入れています。

例えば自分のブログの閲覧数、SNSのフォロワー数、拡散協力してくれる著名人、業界規模などです。出版社の人間が自分の書きたい書籍の業界に詳しいとは限りません。こちらで資料を用意しておくことで、編集会議内で後押しになります。

↑ブログ飯企画書(2013年)

ちなみに企画書はWordでも良いですが、編集者の環境がWindowsなのかMacなのかによってフォントが変わってきますし、レイアウトの崩れが発生する恐れもあります。

そのため、どんな環境でも見られるPDFに変換して提出するのが安心です。

Adobe Acrobat オンラインツールなら、わざわざWordを開かないでも、ドラッグ&ドロップするだけで簡単にPDFに変換できます。

●Acrobat オンラインツール「PDFに変換

出版社によって得意分野がある

出版社にはそれぞれ得意分野があります。もちろん編集者にも好みや得意分野があります。

理工書・技術書がメインの出版社、技術書の中でも初心者向けの書籍が得意な出版社、玄人向けの書籍が得意な出版社、ビジネス書が得意な出版社、硬めの本が好き、ライトな本が好き、著名人を口説き落とすことが得意な編集者、作家デビュー作をじっくり作り込む編集者などなど・・・。

企画を持ち込む際、どの出版社に提出すれば企画が通りやすいのかを意識しておくことは大切です。規模が大きい、知名度がある出版社とあなたの企画がマッチするとは限りません。A社ではまったく相手にされなかった企画でも、B社では重宝されるということはよくあります。就職活動と一緒です。

自信のある企画書が出来上がったのであれば、相性の良い出版社を選んで提出しましょう。1社でそっけない対応をされても心折れずに、複数の出版社に視野を広げましょう。

なお、出版社の特色を知りたい場合は、書店で出版物をいろいろと比較すると良いでしょう。例えばインプレスの書籍と日本実業出版社の書籍の傾向はまったく違います。ダイヤモンド社が出している技術書を見たことはありますか?自分でもリサーチは可能ですので、いろいろと調べてみましょう。

ここ数年で売れている本の傾向

あくまでも参考程度&僕の私見ですが、ここ数年で売れている本には傾向があります。

1.超ライトな分野

開脚本とか、聞くだけで自律神経が整うとか、作りおきおかずとか、ふくらはぎを揉めとか、30分程度で気軽に読めるたぐいの書籍です。

2.超ヘビーな分野 

『サピエンス全史』とかピケティの『21世紀の資本』とか、いまだからこそ読んでおきたい『イェルサレムのアイヒマン』とかとか。最近では『ティール組織』なんかもそうですね。海外の書籍を翻訳して、分厚くて文字ばかりの本が(ブームに乗って)売れる傾向があります。

3.超訳系

『幸せになる勇気』とか、もしドラとかが該当します。アドラー心理学や、ドラッガーの提唱するマネジメントの教えが読み物として楽しめます。『君たちはどう生きるか』や、マンガでわかる系の書籍も超訳系に該当します。

4.固定ファンがいる著者

村上春樹先生とかハリーポッターシリーズの作者さんとかがそうですね。みんな新作が出たら悩まずに買うんですよ。実績がある著者になると、そもそもマーケティングとか関係ないんですが、残念ながら僕らはこのポジションではありません。

5.基礎・初心者向けの内容

この分野は流通量も多いですし、新人作家でも充分勝負できるゾーンになっています。今でも『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』って20万部近く売れてるんですよ。みんなエクセルある程度できるじゃないですか。でも改めて学んでおきたい、手元に置いておきたいと思っている人が買っていくんです。

僕らが狙っていきたいゾーンはこの5番です。

ライトなメソッドが書ける、ゴリッとした学術書を翻訳できる、デビュー作にもかかわらず又吉直樹先生のような小説が書けるというのであれば1から4を狙うのも悪くないですが、この記事を読んでいる多くの人はそうではないと思いますので、最初は5のゾーンが一番入っていきやすいんじゃないかと僕は考えています。

企画が通らないと嘆くならばまず10万字書いてしまえ

出版するにあたって、現物があるというのは非常に強いです。企画をいくら練っても、出版会議を通過しないのであれば、本一冊分の原稿を書いてしまうのも一つの手です。

出版企画が通っても、最後まで書ききれない著者は意外と多いです。本一冊書き上げるというのは膨大なエネルギーを使います。普段、文章を書いていない人が、いきなり10万字もの文量は書けないんですよ。だから代理で執筆する、ブックライターという職業も成立するのですが。

この記事を読んでくれている人は、情報発信者が多いと思いますが、みなさんの強みは文章が書けるということです。そして、ブログなどの運営期間が長ければ長いほど、文章のストックがあるということです。

その財産を再編集することで、一冊分の文量になることは充分に考えられます。「企画があります」に、「実はもう原稿できちゃってるんですけど」の一言を加えたら、普通の編集者はびっくりするはずです。よほど的はずれでなければ1回は目を通してくれることでしょう。

もう一つ情報発信者のメリットがあります。それは原稿を公開する場所があるということです。自分のブログでも構いませんし、現在は電子書籍やnoteなど、コンテンツを販売するプラットフォームも増えています。万が一、10万字の文章が出版社から蹴られたとしても、お蔵入りになるというリスクも少ないんです。

いかがでしょう?うじうじ悩んでいるぐらいだったら、書いてみたくなりませんか?

ワンテーマ15万字を書ききる体力を身に付ける

前項で軽く触れましたが、企画が通ったとしても、1冊の本を書ききれない著者(著者候補か)は少なからず存在します。

ですので、この項では書籍1冊分の文量を書ききるためのコツを紹介します。

いいですか?

紹介しますよ。

 

 

 

がんばれ

 

 

 

実際、最後は覚悟と根性だったりするんですが、あまりにも不親切なのでもう少しだけ解説します。

原稿を書き上げるための5つのステップ

原稿を書き上げるためのステップは以下の5つです。

  1. 章立て&項目を出し尽くす
  2. 100項目×1,000字で10万字を書く(できれば15万~20万字は欲しい)
  3. 画像やイラストを用意する
  4. 文章を凝縮する
  5. 余った原稿は特典として活用

1.章立て&項目を出し尽くす

書籍を出版するためには最低でも10万字が必要になります。実は10万字は少ない方で、理想としては15万字から20万字くらい書いて、その原稿を見直して、削ったり足したりして10万字~12万字くらいに着地させて1冊の本になります。

出版企画が編集会議を通過しても、著者が原稿を書ききれなければ本になることはありません。いわゆる企画倒れです。

僕が最初の出版プロデュースとして手掛けていた旅館の集客本があるのですが、9割以上の原稿が出来上がっていたのにもかかわらず(僕がブログの再編集をおこなっていたので)、1割を書くことができなくて没になりました。

執筆中に本業でトラブルが起きてしまったことが大きな要因ではあるのですが、最終的には覚悟が足りなかったのだと思います。僕も著者も。

2.100項目×1,000字で10万字を書く

いきなり10万字書きましょうといっても、ゴール地点が遠すぎます。ですから、章立て、項目出しが重要になります。

100項目出したとして、1項目1000字であれば10万字になります。1500字書けば15万字です。原稿を書いているうちに項目を追加した方が良いと思うときもありますし、削除する場合もあります。この記事も章立ては最初に決めましたが、項目は追加/削除しながら書き進めています。

各項目を書き終わったらPDFに変換して、時間のあるときに(電車での移動時間など)再度読み直すこともオススメです。読めば読むほど直したい箇所が出てくるのが不思議なものです。

Acrobat オンラインツールの「PDFを編集」機能を使えば、クラウド上でPDFにコメントを入れられるので便利です。

いずれにしても、1項目ずつ着実に終わらせていくことで、原稿の完成は近づいていきます。

がんばれ。

3.画像やイラストを用意する

原稿を進めつつ、書籍に入れる画像やイラストも用意しましょう。

文章だけで説明するのは相当高い文章力が必要です。また、読者にとっても文章だけの書籍を読むのは大変です。百聞は一見に如かずということわざもありますが、一つの画像・イラストを配置することで、読者の理解力を高められる可能性もあります。

4.文章を凝縮する

原稿を書き上げたと思ってもそれで終了ではありません。校正や推敲が待っています。

余計な文章を削り、読み手のレベルを想像しながら言葉を凝縮し、分かりづらい表現を修正し、丸くなってしまったメッセージの尖りを際立たせる作業です。

推敲について述べ始めると、さらに2時間のセミナーが必要になるのでここでは割愛しますが、10万字の書籍を出すための原稿は10万字では足りません。当初の原稿時点では1.5~2倍くらいの文量は欲しいです。

ただ勢いで書きなぐった文章は、ブログでは良いかもしれませんが、書店に並べるには稚拙すぎます。そのままの状態では出せないので、編集者の力を借りて内容を逐一確認していく必要があります。

200ページなのに読んだ後、すごく疲れる本ってありますよね。逆に300ページあっても、30分程度でさらっと読めてしまう本もあります。これは言葉の凝縮度によって変わります。

一つの言葉の説明に50文字使って丁寧に具体事例を交えながら解説するのか、2文字の一言で説明を終えてしまうなど読者を選ぶ内容にしているかによって読後感は異なってきます。

現代は良い悪い・好き嫌いは置いておいて、読みやすくて30分程度の通勤時間で読めてしまうような本が好まれる傾向があります。密度の濃い書籍が好まれるのか、読みやすいライトな書籍が好まれるのかは時代によって変わりますが、僕個人的には多めに文章を書いて、凝縮する方法がお薦めです。

なおブログ飯の場合は12~13万字の原稿を書いて、書籍になった時点では9万字になっています。ネットショップの教科書は20万字くらい書いて、15万字くらいに凝縮してます。

がんばれ。

5.余った原稿は特典として活用

文章を凝縮する理由の一つとして、書籍にはページ数という大人の事情があります。いくら300ページを超えてくるような原稿を書いても、256ページと決まった書籍には全部載せられません。

とはいえ、余った原稿を没にしてしまうのは非常に勿体無いです。せっかくなので購入者特典として活用しましょう。

亀山ルカさん著の『本気で稼げる アフィリエイトブログ』の場合は、購入者特典として没原稿PDFを配布しました。70ページ分の本編で使われなかった原稿です。そもそも本編が288ページあって、プラスアルファで70ページです。あるものは捨てずに使えば良いんです。

僕もブログ飯発売の際に、没原稿の無料配布をしました。

ブログ飯ボツ原稿シリーズ

なぜ購入者以外にも無料配布したかと言うと、「無料で読んでもらって少しでも良いと感じたら書籍を手に取って欲しい」という考えがあったので、没原稿の無料公開を選びました。

コンテンツなんてケチケチせずに全部出しちゃえばいいんです。パクられたらどうしよう、ネタが無くなったらどうしようなんて考えは捨てましょう。コンテンツなんて誰が書いたかに価値は依存しますし、心配しなくても、自分が成長すればもっと質の高いコンテンツのネタが思い浮かぶようになるものなんです。ほんとに。

最後に一言、とにかくがんばれ。

ゲラのチェック(校正と推敲)

原稿が書き上がったら、編集者(出版社)が書籍の体裁に沿った形で校正紙を作ってくれます。いわゆる「ゲラ」というものですね。

書籍をつくる過程で、内容の再チェック(推敲)や文章修正、誤字脱字がないか、著者(作家)、編集者、校正担当(校閲)たちが「ゲラ」を見ながらチェックをおこないます。

もちろんゲラは書籍のページ数と同じ枚数があります。初めて出版をする人は記念にもらっておくと良いかもしれませんが、環境に優しいかというと疑問に感じるところも多々あります。

そこで僕の場合はPDFで文章校正をおこなうことにしました。そもそも僕は紙にメモをするのが得意ではないのでPDFの方が性に合っているという点と、デジタルツールなのでコピー&ペーストなどで文章の入れ替えが楽なので愛用しています。

染谷の校正紙

編集さんの校正紙(紙のゲラに手書きでメモを入れてPDFに変換したもの)

読者に寄り添った言葉の選び方

原稿の時点で意識しておいた方が良いのですが、実際にゲラになると見え方も変わってきます。そこで改めてチェックしておきたいのが文章のわかり易さです。

専門的な情報を伝えることは非常に重要ですが、表現によって伝わる量は大きく変わります。読んでもらいたい層に理解してもらうためには使用する言葉にも気を付ける必要があります。

以下の図を見ていただけると一目瞭然なのですが、あなたの情報をプロ層に届けたいのか、初心者層に届けたいのかによって使用する用語が変わってきます。

文章の意図が伝わる量は、読み手のレベル(層)によって変わります。

プロ層に響く情報を届けたい場合は、専門性の高い内容、業界用語、上級者しか使用しないような専門用語を最大限活用して文章を構成する必要があります。上級者層にとって、最低限の基礎知識は特に必要ない情報であり、場合によっては邪魔と捉えられてしまいます。

わざわざ基本的な情報を載せる必要はなく、ひたすら高度な情報を載せていきましょう。一部の読者層(スペシャリスト層)にしか伝わらない可能性が高いですが、その一部の層から支持されることであなたの信頼度を向上させることができます。「あなたの文章を読むことで、読者本人が自分でできるようになる」という内容が好まれる傾向もあります。

逆に初心者層に情報を届けたい場合は、とにかく難しい単語や専門用語を使うことは避け、日常生活で使っている用語を中心に文章を構築しましょう。類語辞典のサービスを活用して、難しい言葉を別のやさしい表現に変更することも効果的です。

類語辞典・シソーラス・対義語 – Weblio辞書

理解できない単語が1つなのであれば、ある程度文脈から意味を想像して読み進められますが、理解できない単語が2つ3つと続くと、初心者であればあるほど文章を読み続けるのが苦痛になります。どうしても文脈的に業界用語を含まなければいけない場合は、専門書などを活用してその用語の意味を解説しておきましょう。

いまであればChaGPTに聞いてみると、適切な言い換えを教えてくれるかもしれません(ChatGPTについては質問力が本当に重要なのですが、それを言い始めるとさらに1万字必要なのでここでは割愛します)。

ここで一つ例を入れます。

以前に東京都の小池都知事が「アウフヘーベン」という言葉を使っていました。このアウフヘーベンという言葉、ドイツの哲学者であるヘーゲルが提唱しているヘーゲル弁証法の中で使われている言葉です。ちなみにヘーゲルの本名はゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルです。

ヘーゲルの本名はどうでもいいんですが、ヘーゲル弁証法を解説すると、事象や命題について「肯定(テーゼ)」し、その事象を「否定(アンチテーゼ)」する。否定しつつも互いに生かし「統合(ジンテーゼ)」させることにより、両者をより高い次元のレベルへと発展させるプロセスを「アウフヘーベン」と言います。

わかります?

僕は初めて読んだ時、さっぱりわかりませんでした。なので、もうちょっと日本語的に簡単に言い換えます。

それは「踏まえて乗り越える」とか「含んでさらに良くする」とかそんな感じです。これだとなんとなく身近になりませんか?

ちなみにアウフヘーベンを漢字二文字にすると「止揚(しよう)」という言葉になります。おそらく一生のうち一度も使うことのない単語でしょう。でも哲学者同士であれば、これまで僕がやってきた様々な解説なんて必要なくて「止揚」の二文字で終わるわけです。

初心者向けの文章の難易度の目安としては、小学生高学年の子が読んでも理解できるような単語やフレーズ、文体にするように注意しましょう。小学校5~6年生になれば日常生活で使う言葉であればほぼ理解できます。ただ、専門的な用語は首を傾げることが多いことでしょう。初心者層の理解度も同じぐらいだと認識しながら文章を書くことで、読者に優しいコンテンツができあがります。

これが、読み手の層に合わせた翻訳ということです。専門家であれば「アウフヘーベン」や「止揚」で充分なんです。でも知識の少ない人に向けての説明であれば、何十行も言葉を用いて、手を変え品を変え、一般的な言葉に直してあげる必要があります。

自分の専門性が高くなればなるほど、初心者層にとって普段使用しない用語を無意識に使ってしまう傾向がありますので、注意してコンテンツを作成しましょう。

また、読者が実感できる(経験したことのある)具体的事例を盛り込むことで、より理解度を高めることができます。「あなたの文章を読み、行動に移すことで、読者本人の問題を解決させることができる」という内容が好まれる傾向もあります。

著者こそが最強の営業担当

企画が通って、原稿が書き終わって、製本されて、書店に並ぶことによって、あなたの作品が世間にリリースされます。

多くの著者は執筆作業に全力を投じてしまい、エネルギーが尽きてしまいます。配本されれば自分の役割は終わりで、あとは出版社や書店が売ってくれると思いこんでいる著者も居ます。

それは大きな間違いです。誰も売ってくれません。あなたの作品はあなたが売るんです

そう、著者こそが最強の営業担当であるべきなんです。

内容が良い本であることは大前提なんですけど、理想だけ高くて売れていない本は存在していないことと一緒です。売れている本は正義なんです。売れるか売れないかで、あなたに2冊目3冊目の依頼が来るかどうか変わってきます。

発売前はAmazon、発売後は書店

僕の出版プロモーションの手順として、まずはAmazonの予約を増やすことに注力します。ある程度、原稿の目処が立ってくると、出版社がAmazonに書籍の情報を掲載します。

  1. 書籍のタイトルやページ数、発売日などの基本データの掲載
  2. 書籍の内容や著者プロフィール、目次などの詳細情報の掲載
  3. 表紙画像の掲載

出版社によって違いはありますが、この3つのステップを経て書籍の詳細情報が登録されます。ですから、各ステップにおいて、ブログやSNSで告知をおこなっています。もちろん友人に告知協力をお願いする場合もあります。

Amazonが提供している著者セントラルに登録することで、著者のプロフィールの詳細を載せることができます。こちらもぜひやっておきましょう。

Amazon著者セントラル登録方法

Amazonは発売直後に売り切れになってしまうと、タイミングによって1週間以上在庫が補充されない場合があります。発売直後が一番売れるのに在庫切れというのは完全に機会損失ですので、早めに予約を積み上げておくことに注力します。

書籍自体は発売日の1週間前には見本誌ができあがってきます。

その時点で仲の良い発信者などにあらかじめ献本などをしておくと、発売日近辺にブログで書評を書いてくれることもあります。その場合は、あなたのSNSで全力拡散しましょう。そしてAmazonのランキング向上に繋げましょう。

献本については出版社が書籍を提供してくれる場合もありますし、著者割引で2割程度安く購入できる出版社もあります。自分から送る場合は、気持ちを込めた手紙を添えても良いでしょう。

とかいいつつ、一番楽なのは住所を聞いてAmazonから送るパターンです。2割安く買っても、送料で相殺されちゃうんですよね。であればAmazonから送った方が、封筒に住所を書く手間も省けます。自分に合った献本方法を見つけておくと良いでしょう。

なお僕の場合、献本は書評やAmazonレビューなんて期待せずプレゼントしています。お世話になった人への感謝の気持ちでお渡ししています。もし、書評を書いていただけるにしても「良いも悪いも含めて好きに書いてください」と言ってます。

発売日が過ぎたらAmazonはひとまず放置しておいて、書店のプロモーションに入っていきます。

書店営業の作法

Amazonでのプロモーションも大切なんですが、Amazonってあくまでも一つの書店なんです。ですから、Amazonにリソースを集中させるのは得策ではありません。

全国には1万店を超える書店があります。1万店すべてに書籍を置いてもらうことは不可能ですが、400店に10冊ずつ置いてもらえばそれだけで4,000部です。書籍を売りたければ書店をないがしろにしてはいけません。

アナログ的に感じるかもしれませんが、全国の書店で面陳列/平積みしてもらう期間をいかに延ばすのかという施策も必要になります。書店に行った時、表紙を向けて並んでいる書籍と、棚にささっていて背表紙だけの書籍のどちらを手に取りますか?

棚にささってしまった時点で、書籍を手に取ってもらう機会は激減します。お客様の目に留まらせるということは書店で売り上げるためには重要な要素なのです。平積みするのか、棚にさすのかを決めるのは書店員さんです。書店員さんとの関係性・信頼関係を築くことで、並べてくれる期間を人為的に延ばすことができるんですよ。

ずっと並べてくれていれば、お客様に手に取ってもらう機会も増えますから、結果としてコンスタントに売れていきます。売れていれば、棚にさしてしまう理由はありませんから、ずっと平積みしてくれるわけです。

ブログ飯って2013年に出てる本なんですけど、いまだに面陳列してくれている書店は多いです。それは、書店員さんとの信頼関係と、販売実績だと思うんですよね。保証はできないんですけど。

技術書の著者で書店を回る人はほとんどいないです。書店員さんから「初めて著者と会いました」って言われることも多いです。足を運んだだけで、他の著者よりも一歩踏み込めるんです。書店を回らない理由ってありますか?

「出版社があんまり動いてくれないんですよね」という言葉をときおり耳にします。当然です、出版社の営業人員は限られているんですから。出版社の営業担当は、売れる本を優先するんです。

残念ながら僕らは稲盛和夫さんや東野圭吾さんではありません。新人の、知名度も低い、そして自分で売ろうとしない著者の本には、最低限しか時間を割けないんです。

出版社は本を書店に並べてくれただけで役割を果たしています。それ以上の活動をやってくれたらラッキーだと思いましょう。自分で動いて本を売る活動をする必要があります。自分の活動で売上の初速が上がったら、営業部全体で応援してくれるようになります。

というわけで、僕の書店営業ノウハウを漏れなく公開します。

やっていることは非常にシンプルで、ポップを作って、それを持って関東圏の書店を回ります。

紀伊國屋書店、丸善・ジュンク堂書店、有隣堂、三省堂、ブックファースト、蔦屋書店といった大型チェーン店は絶対に回ります。秋葉原の書泉ブックタワーや、八重洲ブックセンター(休業中ですが)、与野の書楽など、地域密着した大型書店も可能な限り訪問します。

僕は埼玉在住なので関東圏以外はなかなか足を運べないんですけど、出張や旅行に行った地域に書店がないか調べて、必ず訪問するようにしています。大阪や名古屋で講演したときにも書店回りをおこないました。沖縄旅行の際にはジュンク堂も行ってます。要はやるかやらないかです。売る気がなければ回らなければいい。

ちなみにポップは鬼嫁先生に描いてもらってるんですが、まぁ、なんというかインパクトはあります。渡す時に書店員さんに失笑されるので心の強さが必要なんですが。

でもこれくらいインパクトあると書店員さんに覚えてもらえるんですよ。「また来たんですか、今度はどんなのですか?」ってニヤニヤしながら話しかけてくれます。ここまでインパクトなくてもいいですけど、足を運ぶというのが重要で、書店員さんに顔を覚えてもらうのが一番の目的です。

訪問後は必ずSNSで報告します。もちろん、友人やフォロワーに書店に置いてあることを告知するという意味もありますが、実は出版社へのアピールでもあります。

僕、Facebookで編集者と繋がっていたり、Twitterで出版社と繋がっていたりします。僕が書店営業の様子をSNSで流すことで「この著者はここまで動くんだ」ということを暗にアピールしているんです。

そのアピールは該当書籍の編集者や出版社だけにしているわけではありません。類書を取り扱う出版社の編集者に僕の動きを見てもらい、「染谷はうちの本を書いてくれたときもこれだけやってくれるんじゃないか」という期待感を持ってもらうことを狙っています。

原稿を書いて、自ら売ってくれる。出版社としては繋がっておいて損はない著者だと思いませんか?

直接的な理由は出版社のみぞ知るですが、結果として僕は数多くのお声がけをいただけますし、出版社側は新たな著者を発掘できます。また、原稿も(多少は遅れても)仕上がるし、増刷もかかるし、みんなが幸せになるという形になっているんじゃないかと勝手に思っています。

先程も書きましたが、大手書店は基本的に全部押さえているんですが、特に紀伊國屋書店と丸善・ジュンク堂書店の訪問には力を入れています。これにも理由があって、丸善・ジュンク堂書店は純粋に店員さんが好きだという個人的な理由です。そして紀伊國屋書店はシステム的な理由です。

紀伊國屋書店はPubLineという、販売情報システムを外部に提供しています。もちろんジュンク堂やブックファーストも販売管理システム自体は持ってるんですけど、紀伊国屋のPubLineは出版社や他の書店も導入していている場合が多いです。要は紀伊國屋書店の売れ筋商品=日本で売れている書籍だという認識になるんです。

もう一つ、これは技術書だと販売数的に厳しいので僕はやっていませんが、王様のブランチなどの情報番組内でブックランキングが公表されるコーナーがあります。この調査店舗から集中的に購入してもらうことで、テレビで書籍が紹介される可能性が生まれるわけです。

ランキング上位の多くがビジネス書や文芸書なので、技術書がそのランキングに入っていくのは大変ですが、知識の一つとして持っておくと良いかと思い、記載しました。

なお、僕は仲の良い書店に行った際には、感謝の気持を込めて一冊買っていきます。書店の販売実績になりますし、買った本は献本用として使うこともできます。

出版社の営業部が著者の書店回りを嫌がる?

著者が書店営業するのを嫌がる出版社があると知って疑問に思っていたんですが、とある噂で著者と書店がトラブった情報を聞いて、「あぁなるほど、そんな状況であれば仕方ないな」と納得しました。正直言って予想の斜め上をいってました。そんなことあるんだ。

細かいシチュエーションはいろいろあるんですが、トラブルの大きな要因は以下の3つのようです。

  • 勝手に目立つ位置に自分の書籍を移動させる
  • とにかくしつこく話しかけ、業務の支障になる
  • 自分の書籍が並べられてない理由を知ろうと書店員に詰め寄る

もちろん一部の著者ですが、こんなことをされるぐらいなら営業部が「行かないで欲しい」と思うのも無理はありません。出版社の営業担当者が書店員と築き上げてきた信頼関係をぶち壊すわけですから。

染谷式書店回りマニュアル

というわけで、出版社と書店との信頼関係をぶち壊さないような、僕の書店回りマニュアルを公開します。

【準備しておくもの】

・名刺(書籍の表紙を載せておくと好ましい)
・ポップ(L版ぐらいの大きさのものを印刷して持っておく)

【書店回りの流れ】

・基本的に書店員は忙しいことを頭に入れておく
・オススメは平日14時~17時。正社員は午後出社の場合が多い。
・土日午後は書店員も忙しいので、できれば避ける(スケジュール的に厳しければ様子をうかがいながら声をかける)
・書店に着いたら自分の本がどの棚(階)にあるか、検索PC等で確認する

【平積み、面陳列になっている場合】

1.近くにいる書店員、あるいはレジに行って名刺を出す。

2.「実はこの本の著者なのですが、◯◯棚ご担当の方はいらっしゃいますか?」
2-1.担当がいた場合、ご挨拶してポップを持参してきた旨伝えて、「もしスペースに余裕があれば・・・」的な低姿勢でお願いする。書籍が並んでいる場所を写真撮っていいか確認。この一言ですぐに飾ってくれる場合が多い(撮影自体はお客様が映らなければOKと言われる)。
2-2.ジュンク堂の場合、一般的なポップより大きいので、用紙をよかったら貰えないか聞いてみる。絵心のある人の場合、その場で書くとインパクトがあるのでペンを持って行くと良い。
2-3.担当者がいない場合、名刺とポップを置いて、「担当者にお伝え下さい」と帰る。可能であれば出勤日を聞いておき、再訪する旨を伝える。

3.できれば「記念に一冊自分でも買っていいですか?」と言っておくと印象に残る(次回作を予定しているのであればやっておいた方がいい)。ただコストがかかるので、全店でやる必要はない。書店員との相性の良さを感じた時ぐらい。

4.書店の近くに行ったら時折訪問する。顔を見せる回数が多いと平積みを続けてくれる可能性が高まる。

【一冊だけささっている場合】

平積みパターンの1と2だけやってご挨拶で帰っても良い。ダメ元でポップについて聞いてみてもいいが、ダメでも心が折れてはいけません。

【書店回りでやってはいけない5つのこと】

  1. 長居
  2. ゴネる
  3. 書籍を勝手に動かす
  4. 勝手に写真を撮る
  5. 他のお客さんを写す(意図しなくても)

書店員が嫌がる行為なので避けましょう。

【心折れないための注意点】

平積みや面陳列されていたり、ポップを飾ってもらえたりしたら儲けものぐらいの気持ちで。並んでいないのは当然と考えないと、数店舗で心が折れます。

出版は儲かるのか?印税と印税以外のお話

印税の話はみなさん気になると思いますので、入れておきます。

僕が書いている書籍のジャンルはIT、技術書カテゴリになるので、小説や実用書などと比較すると、特に初版の部数が大きく変わってくると思います。その辺り、あらかじめ頭の隅に入れておいて頂けると幸いです。

僕が手掛けている書籍の初版は4,000部の場合が多いです。価格は本によって変わるのですが仮に1500円として、印税率を8%として、全部売り切って約50万円です。これを高いと思うか安いと思うかは原稿を書いている期間にもよると思いますが、ブログ飯は企画段階から1年かかってます。ネットショップの教科書は企画段階からいうと1年半かかってます。

1年かかった仕事で報酬が50万円だと厳しいですよね。ただ、Google AdSenseやアフィリエイトの書籍は実働的には2ヶ月かかっていませんが、それぞれ10,000部以上、20,000部以上売れています。そうなると2ヶ月で100万円、200万円という収益になるので、ビジネス的には悪くないと思います。

よく電車の中で、50万部突破と載っている広告を見ると思いますが、あのレベルになると印税額が6000万になります(同じ計算式で試算しています)。ミリオンセラーになると億を超えてくるのが想像できます。広告の部数が正確であればの話ですが。

何十万部のベストセラーになる書籍はごく一部ですので、ここのポジションを狙っていくのは大変なんですけど、30,000部ぐらいであれば真っ当な努力をすれば不可能な数値ではありません。

出版して変わる世界

出版後の世界についても書いてみようと思います。

結論から言うと、出版すると世間(親・友人・知人・旧友)の見る目が変わります。

僕の場合もブログ飯の時はフリーランスという名の絶賛無職だったのですが、本を出した直後から先生扱いになりました。電子書籍も出版には違いないんですが、書店に並ぶという事実はやはり違うんですよね。

紙の書籍を1冊出しているのと出していないのとでは世間的な信頼度は大違いです。Webメディアに取材されるのと、専門雑誌に取材されるのも違います。紙媒体はオールドメディアだと揶揄されますが、世間の信用度はいまだオールドメディアに担保されているわけです。

著者という肩書きができることにより、世間の信頼度のランクが一段上がります。ライターや講師の募集はほぼ100%通りますし、仕事の単価も上げられます。著書があるということはその道の専門家ですから、高めの金額で見積もったとしても納得してくれやすくなります(担当者が稟議書に理由を書きやすくなります)。

行政の仕事ではさらに顕著に影響が感じられます。著書があるということで先生扱いになります。下請け業者の立場になると行政機関は横柄ですが、先生のポジションにいれば丁重に扱ってくれます。良い悪いじゃなくてそういうもんなんですよ、行政機関は。

出版を経験し、さまざまな世界に足を踏み入れることにより、今まで関わらなかったような人脈が広がります。不思議と著者の周りには著者が集まるんです。もちろん、自分自身で行動をしている人の話になりますが。ぜひ自分の目で新しいステージを確かめてください。

なんとここまで25,000字をゆうに超える文量になっています。この長文をここまで読んでくれたみなさんにも、必ず強みや独自性があります。「いつか出版したいという漠然とした夢」ではなく、「2025年までに出版する。そのために2023年は実績を積む年にして、2024年3月まで検証し再現性を確かめ、自分の得意分野を活かした企画を練り上げ、出版社に持ち込む」といった明確な目標を掲げて毎日を過ごしてください。

この記事を読んだ人から著者が出てくれることを期待しています。

あ、そうそう、最後の最後で夢や希望をぶち壊すかもしれませんが、46冊出していても、別のジャンルの会合とか行くと超無名なので、そのあたりは過度な期待はしないでおきましょう。

出版とAdobe Acrobat

最後に出版とAdobe Acrobatの親和性について紹介します。

基本的に僕はPDF至上主義者なので周りがドン引きするくらいPDFを推すのですが、好みはひとそれぞれなので、自分の仕事が捗るツールを使用するのが良いとは思います。でもPDFはいいよ。PDFの子になりたい。染谷パールと染谷ダイヤモンドと染谷フローライトの三つ子。

出版においてPDFのよいところ

これはもう明確で、コストと資源の削減が一番の推しポイントです。

何度か書いていますが、原稿が書籍の体裁(ゲラ)になり、そのゲラを推敲してより良くしていく過程が発生します。一般的には初稿、再校、最終稿の3回チェックが多いのですが、毎回全ページをプリントアウトしたら、例えば250ページ建ての書籍だったら合計750枚もの紙を必要とします。

紙だけではありません。印刷には黒インクも必要ですし、カラーの書籍だった場合はカラー用のインクも消費します。そしてゲラのやり取りには郵送費&時間もかかります。

PDFであればデータのやり取りだけで済むので、印刷コストや郵送コスト、郵送にかかる時間も削減できます。

そんなAdobe Acrobatには実は、PDFの編集や圧縮、分割といった便利な機能がオンラインですぐに使える「Adobe Acrobat オンラインツール」があります。

僕は原稿の執筆やゲラのチェックに以下の機能をよく使っています。

PDFを編集

移動中にゲラに赤入れをするのに便利です。

クラウドに保存できるので、共著の場合はコメントを共有しやすいのもメリットです。

PDFを圧縮

ゲラのPDFは何百ページにもおよび、サイズが重くなってしまいます。

そのため、編集部にゲラをメール添付で戻す際は、Acrobat オンラインツールでPDFを圧縮しています。

PDFを分割

ゲラを全ページ一気にチェックすることはないので、複数の章ごとに分割しています。

PDFのやりとりに気持ちや想いをしっかり乗せよう

合理的に考えたらPDFでやり取りした方が間違いなく効率が良いんですよ。でも人間って効率だけで判断する生き物ではありません。気持ちや想いも重要なんです。

特にデビュー作のゲラは嬉しいし、記念に紙で手元に置いておきたいと思うのが人ってもんです。コストなどは度外視で、出版社にお願いしてデビュー作のゲラは紙で印刷してもらうことをオススメします。

あ、PDFの場合コストがほぼゼロなので、編集がスムーズ過ぎて時間が余るとやたら校正回数が増える危険性もあります。僕の最高記録は7回校正です。暇人かよ。

と、最後は愚痴っぽくなっちゃいましたが、この記事を読んで「出版にチャレンジしたい!」と思ってくれる人が一人でも増えたら嬉しいです。