今度、WordCamp Tokyoで怪しい壺を売るお話をするんですけど、本来2時間モノのセミナーを30分で終わらせるので、カットしている箇所がかなり多いんですね。
で、しばらくこのテーマでセミナーをやることも無いと思うので、端折った内容の一部をブログ記事で解説していきたいと思います。それはランディングページ(商品販売ページ)の構成についてです。
そもそもランディングページとはなんぞや?という人はこちらのリンク集を見ていただければよいかと。
こんな感じで縦にびろーんって長い、商品(サービス)を売るため用に作られた1ページ立てのウェブサイトのことですね。
なぜこのようなページを作るのか。
それは、お客様に商品を買ってもらわなければビジネスが成立しないからです。そのためには魅力的な、商品やサービスを欲しくなるランディングページを構築しておく必要があります。
今回はランディングページを作るにあたって意識しておきたい4つの要素+αについて解説します。
目次
OATH(オース)の法則
コピーライティング用語でOATH(オース)の法則というものがあります。
このOATHというのはアメリカのマーケッター、マイケル・フォーティン(Michel Fortin)氏が提唱しているメソッドです。以前は英語原文のページが有ったのですが、現在は無くなってしまったようです。そんなわけで、僕の方で意訳と適当な事例を用意しましたので以下を読み進めてください。
OATHというのは4つの状態の頭文字を取った用語で、以下のようになっています。
Oblivious(オブリビアス)
この単語は「無知」という意味で、問題を認識していない状態を表します。
受験で例えてみると、中学2年生に「あと1年後には高校受験があるんだよ」と説明しても「へー、なにそれおいしいの?」と言っているような状態です。
受験があるという事実を認識していない子に受験勉強をさせるためには、将来について、進学する必要について、試験内容について、現状の成績など一つ一つ説明して、だから勉強する必要があるんだということを認識させてあげる必要があります。
このように、ターゲットがObliviousのレベルの人に学習塾に通わせたり、参考書を買わせたりするのはとても大変です。
Apathetic(アパセティック)
次のレベルは「無関心」です。問題があることは認識しているのに、その問題に関心が無いという状態です。
同じく受験を例に取ると、受験があるということを認識していても、「まだ1年後だし、僕にはまだ関係ないよ」というように無関心な状態を表しています。
このレベルにいる子を勉強させるには、Obliviousの時よりはまだいいですが、「なぜ1年前から勉強をする必要があるのか」などを理解してもらって、勉強してもらう状態にするにはかなり手間がかかります。
Thinking(シンキング)
その次のレベルが「考えている」という状態です。
「受験が控えていて勉強しなければいけないんだけど、何から手を付けていいのかわからない」という状況ですね。
このレベルの子に対して、塾に通わせたり参考書を買わせたりするのは比較的簡単になってきます。評判の良い塾や参考書を紹介し、評判の良い理由を教えてあげればそこそこ簡単に申し込んでくれるでしょう。
Hurting(ハーティング)
最後は「苦痛」を感じてる状態です。今すぐにでも苦痛から開放されたい、とにかく切望しているという状況です。
このレベルの人に商品を売るのは一番簡単です。もう試験は1か月後に控えているのに成績が上がらない。そんな時、「暗記パン」を提示されればすぐにでも手を伸ばします。多少怪しくても、藁にでもすがりたい状態なので、何にでも手を伸ばすのです。砂漠で水を売るようなイメージですね。
以上がOATHの意識レベルの解説となります。
ランディングページに当てはめて考えてみよう
自分が扱っている商品やサービスに対し、ターゲット層がどのレベルにいるのか意識してランディングページを作る必要があります。
砂漠でのどが渇いて死にそうな人に、この水はバナジウム成分が豊富でこれを飲み続けることによって体調が改善されうんぬんかんぬんという説明をしていたら干からびて死んでしまいます。
そんなことより100万円の泥水を目の前に置くだけで売れます(その場で100万円を持っていなくても、後で払うといって買うはずです)。だって、いま飲まないと死んでしまうから。要はこの状態の人には申し込みフォームを提示するだけで簡単に売れるということです。
逆にエスキモーに氷を売る的な関心の薄い人に商品を売る場合は、商品の特性や使うことによるメリット(シンキング)、使うことによりあなたの問題がこのように改善される(アパセティック)、あなたは今このような状態でこの状態を改善していかないと将来的にこんな問題が発生する可能性があります(オブリビアス)というように、解説、理解、説得をしなければいけないため、結果的に長い文章が必要になります。
基本的には、オブリビアスの人を教育するより、ハーティングに近い状態の人を探す努力をする方がビジネスとしては効率的です。ただし、そのようなマーケットはほとんど無いため、シンキングの層、アパセティックの層に訴えかけていく能力が必要になるのです。
マズローの欲求段階説
人間の欲求レベルを考える時、マズローの欲求段階説があります。
1.生理的欲求(Physiological needs)
2.安全の欲求(Safety needs)
3.所属と愛(親和)の欲求(Social needs / Love and belonging)
4.承認(自我)の欲求(Esteem)
5.自己実現の欲求(Self-actualization)
人間の欲求はこのように変化していくというものです。
マズローの欲求段階説を簡単に解説すると、生理的欲求とは食べたいとか、寝たいとか、トイレに行きたいとか、生きていく上で必要最低限の欲求のことを指します。
安全欲求とは、お腹がいっぱいになったら安定した暮らしがしたいという欲求です。お金が欲しいとか住む所が欲しいとかも一緒で、生活のレベルを少しでも向上したいというのもこの欲求です。
親和欲求とは、仲間が欲しいという欲求です。恋人や家族、友人、仲間なんかが欲しいということですね。
自我欲求とは、仲間ができたらその中で認められたいということです。外見的魅力や保有資産などを自慢したくなる系といえば通じますかね?
自己実現欲求とは、お金とか名声とかは関係なくとにかく自分がどれほどの人間かを試したいという欲求です。
何が言いたいかというと、下層(生理的欲求に近い方)の状況にいる人に商品を売る方が簡単だということです。
生理的欲求というのは砂漠で水を売る系なので申し込みフォームだけで注文が入ってきます。安全欲求は、例えば「お金稼ぎたいですよね」とか「いい生活したいですよね」的な内容になります。お金があるとこんなことできますよというような内容を書いて、気持ちを高ぶらせていく必要があるのでランディングページは多少長くなる傾向があります。
親和欲求はいわゆる「モテたいですよね」的な発想です。恋愛や人付き合いを改善する等の書籍や美容関係の商品の一部はここに属します。これもモテモテになった後のことを想像させてあげる必要があるので、内容的に長くなる傾向があります。
これより上の自我欲求、自己実現欲求にいたってはもう人それぞれなので売るのが非常に難しいです。なおかつ、その人に合わせた内容、セールス内容になってくるので、それを網羅しようと思ったらとんでもなく長いランディングページが必要になってきます。
ただし上層に行けば行くほど、その人にマッチした内容・商材を提案することにより高価な商品やサービスを売ることも可能になりますので、自分の持っている商材がどこに当たるのかを判断し、金額設定やランディングページの作成を行うことが重要です。
ワンメッセージ・ワンマーケット・ワンアウトカム
一つの主張を、一つの顧客層に投げ、出口を一つだけ用意しておくということです。いわゆるランディングページはこの法則を利用していることが多いです。
例えばカニ屋さんがあったとしましょう。ここでイカの話をされたら顧客は混乱しますよね。カニを売りたいのにイカを買いたい層には(メール等で)告知しないですよね。
出口がたくさんあると、お客は何処に行っていいのか混乱しますよね。特に商品を売る一番大切な申し込みページ以外の出口を多くすると、顧客がいろいろ他のページに逃げてしまい肝心な売り上げに繋がらないという現象が発生します。
生産者のプロフィールはこちら→リンク
生産者のカニにかける想いはこちら→リンク
自慢のカニについてはこちら→リンク
安い理由はこちら→リンク
世間からの人気度合いはこちら→リンク
美味しい理由はこちら→リンク
配送についてはこちら→リンク
保存についてはこちら→リンク
申し込みについてはこちら→リンク
ここまで露骨にいろんなページにリンクを張っていることはありませんが、これだけ出口があると申し込みに至る前に顧客はどんどん逃げていってしまいます。
そのため、1枚のランディングページに載せたいことは全部載せて、顧客の期待値を最大限まで高めた上で申し込みボタンに直行させる必要があります。
http://item.rakuten.co.jp/kitauroko/event_limitation_vol01/
上のリンクのカニ販売ランディングページなんて、まさにこの法則に基づいています。ウチのカニはいいよというメッセージを、カニが欲しい人に向けて発信し、そして申し込みフォームまでの出口は何一つ無いという構成になっています。
こうすることによって、訪問者の購買意欲を高め、売れるランディングページは構築されていくわけです。
コピーライティング
ランディングページは顧客がその商品を欲しくなるように体系立てて構築されておりその中でコピーライティングのテクニックが活用されています。
基本的に重要な要素は以下の5つです。
1.Head copy(見出し)
2.Sub Head copy(副見出し)
3.Bullet(ブレット/弾丸)
4.Guarantee(保証)
5.Postscript(追伸)
では一つ一つを解説していきます。
ヘッドコピー
ヘッドコピーはとにかく一番インパクトのあるものを一番上に持っていきます。あなたが見込み客に提示できる最大の約束事を宣言し、これで見込み客に「おっ!?」と思わせて本文を読ませていくわけです。
サブヘッドコピー
続いてサブヘッドコピー。これはヘットコピーほど強力ではないですが、各項目毎に配置し、これを読んだだけでもサービス/商品の内容が理解できる文章を配置していきます。
ブレット
ブレットはこのサービス/商品を使うことによって受けられるベネフィット、メリットをとにかくたくさん載せていきます。
商品を使うとこんな良いことがある。あなたの悩みが解決される。もう心配なんていりませんなどなど。ここで顧客の気持ちを興奮させていくわけです。ちなみにブレットは多ければ多いほどよく、見込み客に「あー、こんなにたくさんあるんだー」という印象を与えればOKです。訪問者は全部のブレットを読むことはなく、自分の気になったキーワードの箇所だけ読んでいきます。
なお、ブレットを出した中で、一番強力なフレーズをヘッドコピー、次に強力なフレーズ群をサブヘッドに持っていくのが一般的です。
保証
万が一、なにかトラブルがあった時の交換や返金などを指します。ここでお客様に安心感を与えます。
追伸
最後に追伸。ここで、商品についての熱い想いをもう一回語ったり、前の文章に戻ってもらえるようなフックを仕掛けます。人は最初と最後(特に値段)しか読まないことも多いので、この追伸でページを上部に戻してもらうということを仕込みます。
他に入っていた方が好ましい要素
・ストーリー
・社会性証明
・権威
の3つです。
開発秘話等のストーリーがあると何故か信用と共感を生みます。そして続きを読んでみたくなります。
社会的証明とは簡単に言うと「みんな良いって言ってるよ」ということです。ここでは顧客の声を指しています。
続いて権威とは大学教授の◯◯さんによると・・・ということです。人はその道の専門家の言うことは信用してしまう傾向があります。しかも根拠はいりません。白衣を着てるとか、名刺に肩書が入っているとか表面的なことでも信用度は上がります(法的にはダメですよ)。
これらの要素が的確に含まれているページが、いわゆる「読み手の心を震わせる」ランディングページなんです。
ランディングページの事例解説
概念だけ伝えられてもイメージできないと思いますので、より具体的に、事例を挙げて解説していきます。
残念ながら原則をすべて網羅しているランディングページはほとんど無いのですが、最近見たランディングページだと、やっぱりRIZAP(ライザップ)が秀逸だと思います。
ここでぜひ確認しておきたいのが「OATH(オース)の法則」や「マズローの欲求5段階説」のどこに位置付いているのかという点と、「ランディングページの構成(コピーライティング)」です。
「OATH(オース)の法則」に当てはめてみると、Apathetic(アパセティック)やThinking(シンキング)の状態の客層に向けて作られていることに気付くはずです。お客様に発生している問題に気付かせてあげる、あるいは、なんとなく問題に気付いているお客様に対して解決法を提示しています。
「マズローの欲求5段階説」では承認欲求か自己実現欲求のポジションです。だからパーソナル化されたサービスで、高額で取引されるわけです。
「ランディングページの構成(コピーライティング)」ですが、こちらもHead copy(見出し)、Sub Head copy(副見出し)が来て、顧客の成功事例(社会的証明)が配置されています。そして顧客のメリットや不安要素を減らすBullet(ブレット/弾丸)が大量に載せられています。
続いて医療のプロフェッショナルのコメント(権威)があり、さらにブレット、体験者の声、トレーナーの研修制度(安心感)、ブレット、栄養管理士(権威)、Q&A・・・・と情報がこれでもかと掲載されています。
そして最後にGuarantee(返金保証)があるわけです。Postscript(追伸)は無いですが、しつこくなりすぎるので無くても問題ないかもしれません。
ここまでしっかりとメリットを読ませられたら、なんか痩せそうな気になりますよね。万が一痩せなかったら全額返金ですよ。コミットしない理由なんて無いでしょう。
多くのランディングページは初回訪問者に興味をもたせ、本文を読ませるためのヘットコピー。続いて商品の大きな特徴を述べるサブヘッドコピー。そして商品を利用することにより、使用者がどのような便益を受けられるのかというブレットが明示されています。
商品開発のストーリーや専門家の推薦文などが掲載されている場合もあります。そして最後に返品保証を配置することで、お客様の不安感を払拭しています。
ランディングページ作成の原理をもとに事例を見ることにより、お客様に商品を購入してもらうまでのモチベーションをどのように構築しているのかを認識することができます。原理を理解し、事例に学ぶことであなたのショップのランディングページを魅力的に構築することができます。
4つのNot
余談なのですが、文章を読ませる(物を買わせる)には4つのNotというものを超えていかなければいけません。
その4つのNotとは
Not Open(開けない)
Not Read(読まない)
Not Believe(信じない)
Not Act(行動しない)
人は文章を読まないし、内容を信じないし、簡単に行動に移しません。
さらに最近は、ニュースレター等のメールマガジンに記載されているURLリンクすらクリックして開けてくれない場合が多いです。検索結果に表示されている概要に魅力を感じなければ、その記事をクリックして読もうなんて思わないですよね。
だからこそヘッドコピーやメールの導入部分を強力にすることで関心を持ってもらい、「クリックしてもらって」、「読んでもらって」、ブレットやストーリーで「信用してもらって」、最後に申し込みはこちらをクリックと書いて、気持ちが高揚したお客様に「行動」してもらう必要があります。そうしないと売上に繋がりませんからね。
これらの点をもれなく注意して構成することで、とてもパワフルなランディングページができあがります。
別にネットショップなどで独自商品を売るときだけに使えるスキルではありません。ブログで商品を紹介したい(アフィリエイト)、自分のサービスを紹介したいといったときに、何か一つでもこの記事のエッセンスを加えることで、読者の気持ちを動かせるようになりますよ。