ウェブサイトやオウンドメディア、ブログを運営するにあたり、自分一人でおこなうのか、チームを組んで複数人でおこなうのかによって運営スタイルは大きく変わってきます。
複数人で運営することにより、記事本数の増加や、記事の多様性が生まれるなどのメリットが有ります。一方でライターの募集や記事作成のルール制定、編集、報酬支払いなど、自分一人だけの時にはなかった業務が発生したり、コストが増大したりするデメリットも有ります。
僕も幾つかのメディアのお手伝いをしてきましたが、その体験をもとにチームを組んでメディアを運営する方法や注意点などについて解説します。
目次
チームで運営するメリット・デメリット
物事にはすべて両面が存在します。個人で運用すべきなのか、それともチームで運用すべきなのかは、しっかりとメリット・デメリットを比較した上で判断する必要があります。
もしメリットよりもデメリットの方が上回ると感じたら個人で運用を続けた方が良いでしょう。デメリットよりもメリットの方が大きいと判断したらチームを組成する準備に入りましょう。
もちろん、すべてを満たしてメリットだけの状態にしておくというのが理想でしょうが、残念ながら現実はそうではありません。前もって考え得る状況を想定しておくことで対処の仕方が大きく変わってきますので、可能な限り準備を整えておきましょう。
チームを組むことの代表的なメリット
記事本数の増加
記事ジャンルの拡張
専門性の強化
役割分担が可能
新企画の展開
結果として、メディアの発展スピードの促進が見込めます。
チームを組むことの代表的なデメリット
原稿料などの金銭コストの増加
編集(文体やルールの統一チェック)などの時間コストの増加
管理業務の増加
人間関係の悪化による作業効率ダウンの可能性
私のために 争わないで
結果として、金銭・時間・心理的コストの増加が見込まれます。
このように利益と損益が背反している状態で、いかにリスクを減らし成果を最大化させるかが大きな課題となります。
最初のうちは個人で手間を掛けて運営し、収益が発生してきたタイミングで、その収益分をチーム拡大のための原資にすることでリスクを抑えることも可能です。
いつまでにどのようなメディアにしていきたいのかという目標をしっかり設定して、その目標に近づけるためには何が最適かという点にフォーカスして行動を選択しましょう。
理念や方針を言語化する
チームを作ると決定したのであれば、どのような方針、方向性でメディアを運用していくのかを策定していかなければなりません。なんとなく、なぁなぁで運営を開始してしまうと、問題が発生した際に収集がつかなくなってしまいます。
あなたがメディアを開始した時の理念や目指すべき方向性について、メンバーに共有できるように言語化しておきましょう。あなたの頭の中にあるイメージをテキスト化することで、ぼんやりとしていたものが明確になってきます。何度も何度も試行錯誤して言語化することで、理念はどんどん改良されていきます。
言語化することによって、あなたの考えに賛同できるメンバーが近づいてきてくれますし、万が一なにかトラブルが発生した際の道標になります。
特に複数のライターでメディアを運用する形式になるのであれば、自由度の高い・個性の強いメディアにするのか、一定のルールを設定してその基準に沿った均一的なメディアにするのかも決めておいた方が良いでしょう。
前者はある程度実績のあるライターやブロガーが、個人のキャラクターを前面に出した記事を書ける人向けです。コラムであったり、文量(情報量)の多い記事であったりして、1記事で読者を惹きつけられる内容を重視するメディア向けの方向性になります。
後者はニュースメディアのような、1日10記事ぐらい淡々と発信していくようなメディア向けです。
両者の良い所を掛けあわせ、密度の濃い記事と速報系の記事を両方提供するメディア運営も考えられます。自分の目指す方向性がどちらなのかを認識し、運営方針を定めていきましょう。
社内チームでの運用
自分で一からメンバーを探す場合もあれば、既存のメンバー(社員)に協力を依頼して記事を書いてもらう場合もあります。
社内メンバーでコンテンツを作ることの最大のメリットは意思統一が図りやすい点が挙げられます。当初の理念や方針とのズレを感じたら、打ち合わせをすることですぐに対策が打てるわけです。デメリットは、社内メンバー全員が記事を書くことが得意なわけではないという点です。そのため記事の質の確保が難しくなってきます。
社内研修をおこなったり、編集長が修正を入れたりして、一定のレベルになるサポートをおこないましょう。
外注(外部ライター)を活用する
社内のリソースが足りない場合は、外部のライターに記事作成をお願いすることも検討する必要があります。
もし友人がブログなどの運営をしていて、あなたが必要とする知識を持っているのであれば寄稿をお願いしてみても良いでしょう。あるいはクラウドワークスやランサーズといったクラウドソーシングサービスを利用して、外部のライターに記事を依頼することも可能です。
クラウドワークス
ランサーズ
クラウドソーシングサービスを上手に活用することで、数多くのフリーライターにアプローチをすることが可能です。
ただしライターの能力や得意分野、報酬額は人それぞれ違います。ライター個人個人の能力の見極めや文章チェックなどの業務が必要になってきますので、文章の質と原稿コストとのバランス、そして社内のチェック体制の状況を鑑みた上で有効活用しましょう。
記事の仕様書を作成する
自分一人で記事を書いてメディアを運営するのであれば、自分の頭の中だけに文章を書く際のルールがあっても問題ありません。しかしながら複数人のライターの力を借りてメディアを運用するのであれば、一定ラインのルールを明確化しておく必要があります。
最初にルールの意思統一をしておくことで、運用中のトラブルや手間を軽減させることが可能になります。
とはいえ、あまり細かく設定するとチェックする自分自身が大変ですし、管理のし過ぎはライターのモチベーションを下げてしまう危険性があるので、適度なバランスを考えながら設定しましょう。本書では3つの段階に分けて、最低限、決めておいた方が良いと思われるルールをご紹介します。
アイディア出しの段階
ライター側
●自分の書きたい記事、思いついたアイディアの相談
●記事化の了承されたアイディアを共有シートに記入(他のライターとの重複を防ぐ)
●入稿予定日の申請
編集部側
●記事化了承の判断
●記事化して欲しい情報の提供
メールやFacebookグループ、LINEグループなどのツールを活用して、コミュニケーションを図ることも可能です。ただし、複数人数でのディスカッションの場合は、余計な情報(雑談等)が増えてしまうと必要な情報を見つけ出すことが困難になってしまいますので、必要に応じて使い分けましょう。
記事を書いてもらう段階
●記事タイトルや本文文字数の指定
●写真のサイズ、枚数、配置の指定
●段落分けの指定
●専門用語の共通言語化
●一人称(私、僕、筆者等)の指定
●「です・ます調」と「である調」の統一(本文内で併用しない)
●入稿用データのファイル指定(Word、テキストファイル、オンラインストレージ等)
記事を書くにあたっての統一ルールを決めておくことで、入稿後のチェックや編集の時間を効率化することができます。
ただ前項にも書きましたが、あまり厳しいルールにしてしまうと、ライターの個性が削られてしまう可能性もありますので、メディアの運営方針とすり合わせ、適度なバランスで組み立てましょう。
入稿後の段階
●記事の編集ルールに沿った表記かのチェック
●専門用語の翻訳(読者の理解に合わせた表記に修正)
●記事タイトルの再考(検索エンジンに最適化させる、あるいはSNSで拡散されやすいものに修正)
●共有シートに入稿日、公開日を記入
●報酬の精算(締め支払い日の設定)
おおまかでは有りますが以上のような項目が挙げられます。他にも月間の依頼(希望)本数や一本あたりの原稿単価、機密保持など、契約関連の手続きもありますので、外部に委託する際のルール設定は怠らないようにしましょう。
編集長の領域を明確化する
メディアにおいて編集長の役割は非常に重要です。
基本的にはあなた、あるいは社内のメンバーが責任者となり運営していく形になりますが、編集長の考え一つでメディアの性質は大きく変わります。マネージャーなのかプレイングマネージャーなのか。自由度を高めて個性豊かなメディアにするのか、管理を強化して均一的なメディアにするのか。編集長の方針によって、読者からの見え方はまったく違ったものになります。
また、編集長が一人ですべてをチェックしようとしたら、業務がパンクしてしまう危険性も有ります。自分はどこまで管理すべきなのか、どこまでライターの自由度を認めるのかなどの領域を定め、やるべき業務を過不足無くおこないましょう。
完璧主義の人は自分がすべてをチェックしないと安心できない場合が多いですが、ライターを信じて任せるという気持ちを持たないと、長期間メディアを運営していくことは体力的にも厳しくなってきます。すべてを自分でやろうとせずに、アシスタントなどの権限を移譲しつつ安定的な運営スタイルを構築しましょう。
著作権と引用ルール
メディアを運営するにあたって、必ず頭に入れておかなければいけないポイントとして著作権があります。
これは第三者が運営するブログやウェブサイトの文章や画像、音声などを勝手に取得して、自分の運営するブログに掲載した場合は著作権の侵害となります(許可を得ている場合は除きます)。もちろんインターネット上の情報だけでなく、雑誌などの紙媒体に記載されている記事をインターネット上にそのまま掲載しても著作権の侵害となります。
自分の頭を使って、自分自身の言葉で文章は書きましょう。画像が使いたければ自分が撮影した写真や、無料で利用可能なフリーの写真素材サイトを利用しましょう。インターネット上にはフリー素材を提供しているウェブサイトは数多くあります。
ぱくたそ – フリー写真素材・無料ダウンロード
いらすとや
これらのフリー素材提供サイトでは、数多くの写真素材やイラスト素材が無償で提供されています。記事の内容に適合した写真を挿入することで、読み手の理解力を高めたり、イメージの補完をすることが可能となります。
引用を活用しよう
無断での転載は言語道断ですが、著作権法第三十二条には「一定の条件を満たせば」、好評されている著作物を自由に引用できると明記されています。
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。著作権法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html
この「一定の条件」というのは大きく分けて以下の6つに分類されます。
1.引用を行う「必然性」がある
→その引用がなければ文章が成立しない。
2.自分の文章が「主」、引用部分は「従」である
→引用はあくまでも補足的情報で、主となる内容は自分のオリジナルの文章であること。
3.引用部分は他の部分と区別されている
→カギカッコや斜体等で、どこからどこまでが引用か区別されている。
4.引用部分を改変していない
→引用した文章を勝手に編集してはいけない。
5.出典が明記されている
→誰が書いた何という文章かの出所を明らかにしている。ウェブサイトであれば記事タイトルとURLが該当。書籍であれば著者名、書名、出版社、出版年の明記。雑誌であれば、雑誌名、号数、出版社、出版年、引用箇所の掲載頁を明記することが好ましい。
6.正当な範囲内である
適切な量を使用し、引用しすぎてはいけない。
しっかりとルールを守れば参考となる文章を掲載することは法的にも認められていますので、有益に活用しましょう。
商標権の侵害
商標権とは商標を使用する者の業務上の信用を維持し、需要者の利益を保護するため、商標法に基づいて設定されるものです。特許庁に商標登録出願をおこない、審査を経て登録査定となった後に登録料を納付することで商標登録原簿に設定の登録がなされ、商標権が発生します。
要は、企業が自社の利益やブランドを守るためにコストをかけて商標を取得するわけです。
商標登録者の許可なく企業名やサービス名、ブランド名など登録商標を利用することは商標権の侵害に当たります。またトップレベルドメイン(http://○◯◯.comの○◯◯の文字列)を商標登録されているURLにすることも商標権の侵害になります。発覚した場合は権利を侵害する者に対して、企業側から侵害行為の差し止めや損害賠償の請求をされる場合がありますので絶対におこなわないようにしましょう。
余談ですが「ブログ飯」は株式会社MASH(僕の会社ね)の登録商標です。別に権利行使するつもり無いけど(ひどい使われ方をしている場合は除く)。
肖像権の侵害
肖像権は、著作権のように法律上で明文化されていません。また、肖像権の侵害については憲法21条で保証されている「表現の自由」との兼ね合いもあるので明確な線引きが難しいのですが、基本的な考え方を解説します。
肖像権についてWikipediaでは以下のように記載されています。
肖像権は他人から無断で写真を撮られたり無断で公表されたり利用されたりしないように主張できる考えであり、人格権の一部としての権利の側面と、肖像を提供することで対価を得る財産権の側面をもつ。また、肖像を商業的に使用する権利をとくにパブリシティ権と呼ぶ。
一般人か有名人かを問わず、人は誰でも断り無く他人から写真を撮られたり、過去の写真を勝手に他人の目に晒されるなどという精神的苦痛を受けることなく平穏な日々を送ることができるという考え方は、プライバシー権と同様に保護されるべき人格的利益と考えられている。著名人や有名人は肖像そのものに商業的価値があり財産的価値を持っている。
肖像権/Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%96%E5%83%8F%E6%A8%A9
肖像権には二つの要素があります。一つは「人格権」に基づいた肖像権、もう一つは「財産権(パブリシティ権)に基づいた肖像権です。
人格権とは、簡単に言い換えるとプライバシーの侵害です。個人が特定できる写真などを公開されることによってプライバシーが侵害され、個人の信用や人格などが既存される恐れがある場合に行使される権利です。
財産権(パブリシティ権)とは、芸能人や著名人など、その人の肖像そのものが商品的価値を持っていると場合に発生する権利です。タレントを無断で撮影し、インターネット上で公開して広告収入を得た場合など、本来ならその芸能人や関係者が収益を得られるはずだった権利を侵したことになります。これが財産権の侵害に該当します。
インターネット上に公開された情報は誰もが閲覧できる状態になりますので、自分自身で「大丈夫かな?」と疑問を感じたものは止めておいた方が良いでしょう。疑問を感じた時点でグレーなことが多いです。
理念を持って、共感してくれるメンバーと楽しくやるのが一番
長々と書きましたが、自分が運営したい方向性で情報を発信して、仲間を少しずつ増やしながら、楽しんで運用するのが一番ですよ。