そう言えばブログ飯を出版してもう6年も経つのですが、いまだにAmazonのSNSカテゴリランキングに顔を出していて、ありがたい次第です。
で、ずっとやろうやろうと思っていた、改めてブログ飯を読み解いてみよう企画を、遂に重い腰を上げて取り掛かることにしました。
なぜ重い腰が上がらなかったかと言うと、忙しかったというのが一つの理由ではあるんですが、もう一つの理由の方が主たる要因になります。それは「6年前の自分の文章が下手くそすぎて、読んでてこっ恥ずかしい」という理由です。
よくこれで出版したなぁと我ながら思うのですが、本文内でも「全力を尽くすことと、完ぺきを求めることは違う」と書いているので、当時の全力投球だったんでしょう、きっと。
さて、本題。
ブログ飯本文内で
もしかしたら、この本に書いてある内容が理解できない人もいるかもしれません。本書を執筆するに際して、実践していれば、必ずその時期に刺さるような内容を織り交ぜたつもりです。
と書いていますが、実はいろんなマーケティングメソッドやコピーライティングテクニック、心理学、自己啓発、哲学的な要素を織り交ぜて書いています。
僕はエゴサーチが趣味なので書評をよく読むのですが、その多くが「初心者に大切な心構えを教えてくれる」という感想をいただいています。それはそれでもちろん大切で有り難いのですが、専門的知識を持っている人が読むと、いろんな小細工が仕込まれているのに気づくはずなんです。
今回の記事では、その要素を一つずつ紐解いていきたいと思います。
目次
はじめに(アンカリング)
「はじめに」では本書を読む際の注意点を書いています。これはアンカリング、要は読者の意識を統一するために入れている項目です。
アンカリング効果とは、最初に印象的な情報を与えることにより、その後の意思決定に影響を及ぼす効果を指します。
https://service.plan-b.co.jp/blog/marketing/11203/
ブログ飯の「はじめに」には以下のような文章を載せています。
最初のうちに枝葉のようなテクニックを知ることよりも、根や幹となる事を学び、身に付けていくことが大事
「鵜呑みにしない」
「人との違いが価値である」
「すべて最初からやろうと思わない」
このように最初に方向性を明示することにより、僕の求めているゴールに読者を誘導しているわけです。
人間は意識していないことは面白いほど覚えていません。
僕はセミナーで「この会場に来るまで赤色のものを見た人いますか?」って聞くことがあるんですが、手が挙がるのは1割もいません。「赤信号見てるでしょ?」って種明かしすると、みんなハッとします。見てなかったら事故に遭って会場に居ない可能性の方が高いわけです。
世の中は情報に溢れすぎていて、必要ない情報はすぐに脳内から消え去ります。全部覚えてたら生活に支障が出るのでそれでいいんです。でもせっかく本を読むんですから、9割忘れちゃったら勿体ないじゃないですか。
ですから最初に「原理を学ぶ本です」と意識付けしてるんです。
その時に有用なテクニックを書くことは簡単なのですが、それでは半年から1年程度で売れない本になってしまいます。テクノロジーが発展することにより、テクニックは陳腐化するからです。
あと、テクニック書いてないとAmazonレビューで「知ってることばかり」とか「具体性がない」とか低評価付けられるじゃないですか。それを防ぐためにも最初に念押ししてるわけです。ナイス洗脳。
第一章(起・コンテキスト)
第一章と鬼嫁コラムは企画段階では入っていませんでした。実はブログ飯って第二章~第六章までの作品だったんです。
本編書き終わったあとに編集さんが「単なるノウハウだけじゃなくて、染谷が試行錯誤した日々の話と裏側から見てた奥さんの話って知りたくないですか?」っておもむろに提案してきまして。
「言われてみれば確かにそんなノウハウ本無いな」と思ったので、追加で書いたのが第一章と鬼嫁コラムなんですよ。
で、第一章を書くにあたって意識したのが「ヒーローズ・ジャーニー(ストーリーテリング)」というメソッドです。
ぶっちゃけ、他人のサクセスストーリーなんて自慢話に聞こえて面白くないんですよ(心が病んでる僕だけかな?)。でも物語性を持たせることで、共感してもらえ、信頼性が高まるわけです。
ヒーローズ・ジャーニーには一定のルールがあります。詳細は以下の書籍を読んでもらえればと思いますが、簡単に言えば「出立・離別」、「試練・通過儀礼」、「帰還」を織り交ぜることによって、人の心を動かすことができるんです。
飽き飽きしている日常から、スリルあふれる冒険への誘い、師匠や仲間との出会いや別れ、試練、どん底からの復活、宝を持っての帰還。どうですか、ブログ飯のあのシーンはどの要素に該当しますか?
この物語を形成するステップは、どんな物語でも使われています。スター・ウォーズやハリー・ポッター、マトリックスやアナと雪の女王、君の名はでも見られるお約束なんです。
こうやって第一章はできあがりましたが、起承転結でいう「起」の役割、そして染谷という人間を理解してもらうコンテキスト(文脈)を担う章になりました。
なお、一章の最後にこのようなフレーズを入れています。
この本はあなたの道標となるよう、一生懸命書いています。さあ、冒険を始めましょう。
これはヒーローズ・ジャーニーでいう、「冒険への誘い」に該当します。
第二章~第六章(承・コンテンツ)
第二章から第六章はノウハウ(コンテンツ)の提供になります。
基本的にコンテンツの価値は無料化していきます。
現にブログ飯で書いている内容は、もはやインターネット上に点在しています。このコンテンツの価値を担保してるのは第一章と鬼嫁コラム、そしてあとがきになります。誰が書いているのかというコンテキスト(文脈)が重要なんです。
僕がよく使う手法が「権威の活用」です。
権威が人に与える影響(印象の変化)は影響力の武器という書籍に詳しい説明が載っているのですが、簡単に解説すると「人は専門家や先生など、いわゆる権威がある人の発言を信用する傾向が強い」ということです。
実は権威は見た目や自称だけでも通用してしまう場合があります。白衣を着た人に健康のことについて指摘されたらつい信じませんか?名刺に慶応大学教授と書いてあったらなんとなく恐縮しませんか?
その白衣が、その名刺が本当かどうかわからないにも関わらずです。
二~六章をパラパラっとめくるだけでもこれだけ出てきます。
一つ目は「何を書くか」(テーマ)について、二つ目は「何のために書くか」(目的)
これはサイモン・シネックが話している「Why(なぜやるのか)」を意識しています。
ログミーで文字起こしもされているので、動画が苦手な方はテキストでぜひ。
収益は集中させない
アメリカの格言に「Don’t put all your eggs in one basket.(卵を1つのかごに盛るな)」という言葉があります。
卵を一つのかごに盛ると、万が一、かごを落としてしまった場合、全部の卵が割れてしまいます。でも卵を複数のかごに分けて盛っておけば、一つのかごを落として卵が割れて駄目になったとしても、他のかごの卵はもちろん無事です。
この当たり前の話を数学的に理論として証明して、ノーベル経済学賞を授与された学者が居るのです。それがハリー・マーコウィッツという経済学者で1990年に「資産運用の安全性を高める為の一般理論形成」という研究でノーベル経済学賞を受賞しています。
レッドオーシャンを泳ぎきり、ブルーオーシャンを創り出せ
ブルーオーシャン戦略って有名な書籍がありますよね。この知名度を使わせてもらってます。
[新版]ブルー・オーシャン戦略―――競争のない世界を創造する (Harvard Business Review Press)
他にもいろいろ仕込んでいるのですが、かなり長い記事になっているので割愛しますね。気付いたらニヤッとしてもらうか、会ったときにでも指摘してください。
余談ですが、僕のセミナーに出たことがある人は、「権威」をかなり利用しているのに気づくはずです。WordCamp Tokyoで話した「なぜ人は怪しい壺を欲しくなってしまうのか」というセミナーはゴリゴリに使ってますね。
特別コラム:鬼嫁は見た!~没個性サラリーマンの華麗なる転身の秘密~(転・サプライズ)
240ページ以上ある本編よりも評判の良いアレですね。
発売してから6年経ってるのでネタバレしてもいいとは思うのですが、未読の人もまだ1億人以上居ると思うので内容は伏せておきます。
このパートは間違いなく起承転結の「転」であり、サプライズの役割になっています。
おわりに(結・エピローグ)
最後の数ページなのですが、ヒーローズ・ジャーニーでいう「現実への帰還」の役割を担っていつつ、ここでもライティングテクニックを使っています。
この本を読んで、内容が抽象的だと感じたならば、実践してみてからもう一度読んでみてください。内容が薄いと感じたら──、私に連絡を下さい。あなたのために、もっと実践的で濃い内容に書き直します。
これはコピーライティングでいうところの「保証」です。連絡くれればもっと実践的な濃い内容に書き直すって言ってるんですよ。
ありがたいことに一回も来たこと無いので胸をなでおろしてるんですが(そういうもんなんですが)、強力な「保証」を明示することでお客は安心して商品を買うんです。
ポジティブプランニングとネガティブシミュレーション
おちまさとさんの権威を使ってます。僕が主張してるんじゃなくて、大きな実績を誇るおちまさとさんが言ってるんだから間違いありません。その意見に僕も同意なだけです。
電話線につないで通信を行うダイヤルアップの時代が1998年ごろでした。それが、デジタル回線のISDNを経て、ADSLやケーブルテレビなどのブロードバンドバンドが浸透したかと思うと、すぐに光回線が主流となっています。この間、たった10年程度です。
10年前は何十万円としていたパソコンが、メーカー同士の開発、価格競争によって、今ではたった数万円で高スペックの機種を購入することができます。
つい数年前までは、専門的な知識を持ったウェブデザイナーしか作成できなかったようなウェブサイトだって、技術革新によって、私のような素人でもある程度のレベルのウェブサイトやブログを作ることができるようになっています。
組織変更、部署の異動、給与の変動
これはマジックナンバー3というテクニックを使ってます。
不思議なことに人間って3つの事例を出すと信用しやすくなるんですよ。簡単なんでぜひ使ってみてください。